午後8時の訪問者

午後8時の訪問者 “La fille inconnue”

監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ

出演:アデル・エネル、オリヴィエ・ボノー、ジェレミー・レニエ、
   ルカ・ミネラ、オリヴィエ・グルメ、ファブリッツォ・ロンジョーネ

評価:★★★




 意外と言っては失礼か、『午後8時の訪問者』には物語がある。ベルギーの小都市、川で発見された身元不明の黒人少女の遺体をきっかけに、何故彼女は死んだのか、或いは殺されたのか、その謎を追うという筋がある。警察も出てくるものの、ヒロインこそが事件解決を目指す探偵の役回りだ。

 とは言え、これはダルデンヌ兄弟映画、やっぱりか、犯人探しに躍起になることはない。ヒロインが謎を追いかける過程で浮かび上がる、海辺の町の現実が大きな意味を持つ。一見平和な表情の町の内側をそっと覗けば、そこには暮らしの問題に通じる小さな扉がいくつも並んでいる。ヒロインはその一つひとつをノックするわけだ。

 そうしてノックした先にいるのは、医師であるヒロインが担当する患者たちだ。もちろん全員が少女を知っているわけではない。ただ、それでも救えなかった命が、彼らを不思議な糸で結びつける。無関係な人間同士がどこかで繋がり、その行動に影響を与える世の常。ヒロインは患者たちの人となりに触れながら、それを感じ入る。

 そう、ヒロインが感じ入るところがまた、重要だ。実は少女は死ぬ少し前、診療所のブザーを押していた。けれど、ヒロインは時間外を理由に扉を開けない。罪悪感を感じて当然のこの行為に走ってしまったわけだけれど、彼女を糾弾したい気持ちは沸き上がらない。研修医との関係を通して医療現場の日常を描写、女が生きていくことの難しさをさらりと落とし、むしろ観客を彼女に一体化させてしまうのだからダルデンヌ兄弟は周到だ。

 それにヒロインに扮したアデル・エネルが見事な息遣い・佇まいで観る者の心を掴んで離さない。事件への誠実な向き相方と少しずつ見えてくる真相を通して、彼女が生き方を変えていく様をとても慎ましく美しく見せる。その変化に宿るサスペンスこそ、最大の見ものと言って良いくらいに。おそらくエネルはスター性も持ち合わせている。今後要注目だろう。

 患者の脈が早くなったことから嘘を見抜く件があるため、つい医師がその知識を武器に真相を解き明かすのではないかと期待してしまうけれど、そこはダルデンヌ兄弟、結局市井の人々の心に寄り添うことを優先する。そこが拍子抜けでもあり、嬉しくもあり…。あまりにあっさりと普通のエンディングが、妙に沁みる。





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