スプライス

スプライス “Splice”

監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ

出演:エイドリアン・ブロディ、サラ・ポーリー、
   デルフィーヌ・シャネアック、ブランドン・マクギボン、
   シモーナ・メカネスキュ、デヴィッド・ヒューレット

評価:★★★




 フレッドと名づけられたそいつがいきなり生を受ける。その造形をどう表現したら良いのだろう。良く言えば「肌色のイモムシ」、悪く言えば、そしてあからさまに言えば「ちんちん」である。頭の部分がキノコ風で、しかもしっかりお口を思わせる線が縦に入っているんだもの。どう考えても狙っている。生み出したのはエイドリアン・ブロディとサラ・ポーリーの科学者夫妻だ。ブロディの「パーフェクトな男児だ」というセリフにギョッとした後、今度はポーリーが言う。「なんて可愛いの!」。どこがじゃー。気持ち悪いわ!

 不妊遺伝子操作、それも結合(スプライス)の実験。それによって生まれた生命体をめぐる物語は、倫理観に激しい揺さぶりをかけるもので、あまり気分良く観られるものではない。と言うか、あざといまでにおぞましさが強調され、それが不快さに繋がっていく場面が多々ある。ヴィンチェンゾ・ナタリ監督はそれを承知の上でディテールを積み上げていく。フレッドとそのパートナーのジンジャーとは別に生命体が生まれ、女の子なのに「ちんちん」な彼女はドレンと呼ばれるようになる。ハイスピードで成長を遂げていくドレン。大きくなるにしたがって服を着せてもらい、ぬいぐるみや人形で遊ぶようになる異常さを、ねっとり執拗に見せていく、その悪趣味さよ。お兄さん・お姉さんにあたるフレッドとジンジャーの行く末も含めて、SFらしく細部を凝っている。

 ドレンのイメージが強烈だけれど、しかし主役はあくまでマッドな科学者夫妻だ。人間が抱える狂気が、ドレンが醸し出す不穏な空気と共に前面に出てくる。最初に露になるのはポーリーのそれだ。ドレンを見つめるその目に宿るのは、実験対象への愛情とは違う。ポーリーは娘のように彼女を見ている。そう、母性を暴走させるのだ。冷たい美貌のポーリーが顔を歪ませて、壊れていく恐ろしさよ。子どものためになら何でもする。その底の知れぬ愛情がひたひたと絡みつく。

 ただ、ポーリーの愛情はまだ分かる気がする。意表を突くのはブロディの方だ。こちらは父性が恐ろしい方向に向かうのかと思いきや、どっこいドレンを女として見てしまう欲望を爆発させるから驚いた。ほとんど人間の容姿とは言え、「ちんちん」の香りを残すドレンなのに!ブロディとドレンが身体を求め合う場面の気味の悪さがなんとも言えない味。そしてそれを目撃したポーリーの反応もまた、面白い。怒りが向かう先はどこなのか。

 そうなのだ。『スプライス』は未知の生命体を絡めた奇妙なラヴストーリーでもあり、そこが狂っているところだ。ある種の親子関係である夫妻とドレンの間に、恋愛感情が紛れ込むことで、物語が掴み所のないねじれを起こしていく。当然それに嫌悪感を抱くのだけれど、だからと言ってばっさり斬り捨てられないところが、確かにある。それは物語を俯瞰で眺めることなく、登場人物と同じ目線にまで降りてくる、ギリギリの誠実さから来ていると思う。不快さに立ち向かい、誰しもが抱える「性(さが)」を怖れることなく炙り出している。狂っていて、歪んでいて、でも目が離せない。問題作か。怪作か。ちん作か。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ