はじまりへの旅

はじまりへの旅 “Captain Fantastic”

監督:マット・ロス

出演:ヴィゴ・モーテンセン、フランク・ランジェラ、アン・ダウド、
   キャスリン・ハーン、スティーヴ・ザーン、ジョージ・マッケイ、
   サマンサ・イズラー、アナリース・バッソ、ニコラス・ハミルトン、
   シュリー・クルックス、チャーリー・ショットウェル、
   イライジャ・スティーヴンソン、テディ・ヴァン・イー、
   エリン・モリアーティ、ミッシー・パイル

評価:★★★




 物語は可愛らしいシカが森を散歩しているところから始まる。それを何者かの目が見つめている。シカが気配に気づいたその刹那、茂みの中から青年が現れ、シカの喉元を切り裂く。自然と同化するため身体を泥塗れにしていた青年とその家族を見た瞬間に思う。こいつらは、本気だ。

 森深くで自給自足の生活を送る家族が文明社会に触れ、そのギャップに戸惑い、価値観を揺さぶられる展開は、ターザンの例を挙げるまでもなく定番のそれだ。ただ、『はじまりへの旅』はそれを突破する強烈な個性を具えている。

 ヴィジュアルのインパクトは自給自足生活の徹底から来る。森の生活だからと言って遊び呆けているわけではない。高度な文学や文献を細かなところまで読み込み知識を蓄える。どんな敵にも対応できるよう身体は極限まで痛めつけられる。大の大人でも答えられない問いに平然と答え、断崖絶壁をロッククライミングし、誕生日のプレゼントはナイフがベストだ。つまり彼らは最強の人類に近い。その立ち居振る舞いはぶっ飛んだもので、しかしその身体に極めて清らかな水が流れているのが面白い。

 そう、最初は彼らに喝采を贈る。物質社会にどっぷり浸かって生きる身には眩しく見える。ただ、案外早くにそれは翳りを帯び始める。ある目的のためにスティーヴという名のバスに乗った旅に出たは良いものの、彼らの生活の限界がちらつき始める。森の中でだけで手に入れた知識や技は森から出た途端に応用が利かなくなる危険を秘める。世界は広い。どれだけ知ったつもりであっても、相手は軽くそれを飛び越える。作り手はその現実を炙り出す。その結果、観客は宙ぶらりんの気持ちになるだろう。彼らは正しくもあり、間違ってもいる。そこへの導き方に味わいがある。

 主導者になるのは父を演じるヴィゴ・モーテンセンだ。野性や知性が混然一体となった佇まいの説得力。世界を操るかのような前半の頼もしいこと!ただし、モーテンセンの本領は後半に訪れる。良かれと信じて導いてきた人生観に軋みが生じたときの動揺にこそ、父親の人間味が浮上する。子どもたちの師である父が子どもたちに教えられる、その画を頑丈なものにする。

 物語はやや安易な着地点に落ち着いた嫌いがある。世界は人間が手の中に入れられるほどに大きくはない。それを悟った者たちが、予想できる居心地の良い場所で戯れている気配。もっと苛烈な空間に放り込んでも面白かったのではないか。





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