未来よ こんにちは

未来よ こんにちは “L'avenir”

監督:ミア・ハンセン=ラヴ

出演:イザベル・ユペール、アンドレ・マルコン、
   ロマン・コリンカ、エディット・スコブ

評価:★★★




 イザベル・ユペールにおっかないイメージがこびりついたのはいつ頃からだろう。やっぱり「ピアニスト」(02年)が大きかったか。役に憑依するタイプの演技で、ユペール本人の素が全く見えなくなるのも大きいか。ところが、『未来よ こんにちは』のユペールは軽やかだ。ユペールも我々と同じ人間なのだとホッとさせる。

 ユペールが演じるのはパリの高校で哲学の教師をしている50代半ばの女性。充実した日々だったのが、離婚や母親の死、出版の仕事の不調等が押し寄せ、突如不安定な状況に追い込まれる。ミア・ハンセン=ラヴは彼女の人生の立て直しを急がない。

 …と言うより、無理に立て直しをさせないところに作り手の誠実さが見え、そしてそれが作品の面白い点にもなっている。大抵の映画はヒロインの肩を叩く。人生捨てたもんじゃない。きっとまた良いことあるよ。そんな態度を見せるのは本当の優しさではないとばかりに、ヒロインを時の流れに放り込み、溺れないよう注意を払いながら、じっくり観察を続けるのだ。

 作り手の態度はしかし、ヒロインを追い込むこともしない。ヒロインはあくまで自分のペースを維持し、毎日を淡々と繰り返すことで、世の無常を静かに受け入れていく。良いことも悪いことも自分史のひとつであると、変にコントロールしない。美学とは言わないまでも、そのスタイルに仄かに宿る美、それを愛でる。

 ユペールはヒロインの風に吹かれるままの姿を魅力的に見せる。彼女を客観的に見られる距離感をキープしているあたりはヴェテランの技。しかしより注目したいのは、どんな女も持っているだろう「少女性」を滲ませているところだ。初老が近づいている女の、死ぬまで決して失うことのない、可憐で無垢なる部分を気配として漂わせる。それが心地良い。

 ユペールの佇まいが映画のどの場面でも背景に溶け込む。パリのグリーンとも、ブルターニュのブルーとも、アルプスのホワイトとも相性が良い。人間が自然の一部であることに抗わない空気感が良い。ヒロインが今後どこへ向かうのかは分からない。それでも彼女はそこにある何かをきっと受け入れる。それが美しく感じられるのだ。





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