パリ、恋人たちの影

パリ、恋人たちの影 “L'ombre des femmes”

監督:フィリップ・ガレル

出演:クロチルド・クロ、スタニスラス・メラール、レナ・ポーガム、
   ヴィマーラ・ポンス、アントワネット・モヤ、ジャン・ポミエ、
   テレーズ・カンタン、ムニール・マルグム

声の出演:ルイ・ガレル

評価:★★★




 何となく日本における世間一般のイメージでは、パリの街は「オシャレ」の一言で括られている気がする。もちろんパリのそういう側面を前面に押し出した映画も多いけれど、大抵の場合、それはアメリカ映画だ。ホンマモンのフランス映画はその生活感を掴まえようとする。フィリップ・ガレルの『パリ、恋人たちの影』もそういう映画だ。ここにはオシャレの気配は漂わない。

 とは言え、オシャレでなくとも格好良いのがパリでもある。例えば冒頭、スタニスラス・メラールが道端で佇んでいるショット。何かを口に運んでいると思ったら、フランスパンの丸かじりだ。これがサマになるのが何だかスゴイ。食うことは生きることだと本能的に身体に沁み込んでいるがゆえの佇まい。

 メラールは売れないドキュメンタリー映画監督で、クロチルド・クロは彼を支える妻。どちらも浮気をして結婚生活に波が立つ。どこにでも転がっているありふれた光景だから、筋を辿るだけだと、あまりの単純さに目が点になるだろう(レジスタンス云々のエピソードは比喩的に用いられるだけで終わる)。それよりも身勝手な男と愚かな女の纏う、孤独を中心にした人間味を追いかけたい。

 ガレルがふたりをモノクロームの映像で掴まえる。カラーでは気づかないだろうものが見える。それは人のシワだったり、壁のシミだったり、ペンキの剥がれだったり、散らかった部屋だったり、無造作な髪の流れだったり…。生活と密着したそれらが鮮明に浮かび、目に焼きつく。メラールとクロは進んでいるんだかいないんだかよく分からない淡々とした日々の海を泳ぎ、愛し愛され、傷つけ傷つけられ、それが人間だと戯れる。ただし、戯れ方に本気を感じる。

 メラールが初登場した「ドライ・クリーニング」(97年)から20年近く経つ。透明で残酷に輝いた美貌が何ともまあ、現実感を伴って草臥れたものだ。それがマイナスに転ばないのがおフランス男の意地か。白シャツにジーンズ、よれよれのジャケットで通すメラールは、どうしようもない男の中に、それでも愛を求めてしまう小さな愛嬌を見つけている。何故か憎めない。

 そんなわけで筋など気にしなくとも、どの場面から見てもついていけそうな作りではあるものの、ただ匂いや体温に関しては物足りなく感じられる。写真を連射したかのような映像が案外、人肌の温もりや独特の安心感ある香りには見放されている。もっと肉体と肉体を激しくぶつけ合わせても良かったか。





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