ミッドナイト・スペシャル

ミッドナイト・スペシャル “Midnight Special”

監督:ジェフ・ニコルズ

出演:マイケル・シャノン、ジョエル・エドガートン、キルスティン・ダンスト、
   ジェイデン・リーベラー、アダム・ドライヴァー、サム・シェパード

評価:★★★




 少年はブルーのゴーグルをしている。一緒にいるのは父親とその友人のようだ。テレビから聞こえてくるのは、幼い少年が誘拐されたというニュース。どうやら彼らが当事者らしく、政府やカルト教団が彼らを追いかける。全く何の説明もないままに映し出される逃避行。『ミッドナイト・スペシャル』はしかし、強烈な緊張感が物語を貫く。

 プロットには既視感を覚える。特殊能力を持った少年と、彼を守ろうとする大人たち、そして利用しようとする大人たちを配置した話は、それだけ取り出せばスティーヴン・スピルバーグ映画を思わせるところがあるし、話の全容が見えてくれば「トゥモローランド」(15年)を思い浮かべる人も多いだろう。そもそもゴーグル少年は「X-MEN」シリーズでお馴染みのサイクロップス風ではないか。導き出された先にある結末も、特別秀でたものでも物珍しいものでもない。

 それにも拘らず面白いのは、第一にジェフ・ニコルズの情報の落とし方が巧いからだ。世界観の紹介も登場人物が置かれている状況も何も明かされないままに始まる物語。ニコルズは全く焦ることなく、何気ない会話の隅々に情報を忍ばせる。それまでは観客はあれこれ想像を巡らせなければならないわけだけれど、それこそが重要だ。情報を手にする度に、物語が全く別のそれに見えてくる面白さがある。

 ニコルズはまた、徹底したリアリズムを優先する。題材を考えればSF映画に分類できそうなものだけれど、おそらくニコルズにその意識はない。特殊能力のある少年が現実社会に存在したらどうなるか。父親や母親はどう動くだろうか。突然能力に直面した人はどんな反応をするだろうか。警察やFBIはどんな決断を下すのか。視覚効果アクションに逃げることなく、限界を持った人間たちが己ができることは何かを見つけ出す。また或いは、その無力に絶望する。その生々しさが緊張感に繋がる。

 役者はだから、大芝居を封印する。マイケル・シャノンやジョエル・エドガートンの強面は、歌舞伎風に画面を活気づけらそうなそれなのに、いずれも抑えに抑えた演技だ。キルスティン・ダンストも地味を極める。代わりに彼らは、ふとした瞬間に顔を出す人間臭い表情を大切にする。ニコルズ映画らしく「家族」が重要視された展開には、それがぴたりとハマる。終幕シャノンが一瞬見せる表情など、なかなか沁みる。

 これは謎を解き明かす話ではない。非日常に放り込まれた人々の身体に潜む人間らしい感情を掬い上げる映画だ。愛する人と寄り添う、それに伴う痛みが不思議な余韻を導く。理解するのではなく感じることが優先された、ある意味とても映画的な一品と言えよう。





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