アンストッパブル

アンストッパブル “Unstoppable”

監督:トニー・スコット

出演:デンゼル・ワシントン、クリス・パイン、ロザリオ・ドーソン、
   イーサン・サプリー、ケヴィン・ダン、ケヴィン・コリガン

評価:★★★★




 身も蓋もない言い方をするならば、暴走する貨物列車を停車させようとするだけの話。小学生にも分かる単純な物語で、小難しさの一切を排除、動くものを止めるという極めて基本的な行為を軸にしている。昨今は複雑な構成の映画が次々登場、理解するのに苦労する作品が多いゆえ、かえって新鮮に映ってしまうくらい。そう、『アンストッパブル』はシンプルな物語だ。しかし、これが滅法面白い。あまりにも単純なストーリーに肉付けされる映画の芸のイチイチが効果的に働いている。

 主役はもちろん貨物列車だ。全長が800メートルにも及び、大爆発の危険がある化学薬品を搭載している。些細なミス(愚かなミスとも言う)で無人のまま暴走し始めるこの貨物列車が、次第にモンスターに見えてくるところがミソである。車と違って列車はレールの上を走る。この縛りは映画において致命的ではないかとも思ったのだけれど、アクション映画一筋で突っ走ってきたトニー・スコット監督は、列車の重量に力点を置くことで、それを難なくクリアーしている。確かに暴走する方向はレールからはみ出ないかもしれない。でも、どんな力をかけられても吹き飛ばしてしまう重さを持った列車は、直線では誰にも止められない猛スピードとなり、カーヴでは遠心力により巨体を追い詰められながら火花をバチバチと散らす。その佇まいには堂々たる主演男優の重みがある。

 スコットはモンスターの装飾に力を入れている。動き過ぎるカメラがモンスターの動きを大胆に捉え、畳み掛ける編集がモンスターの呼吸を逃がさない。モンスターが突き進む際に生じる音への気遣いも緻密なもので、レールとの間から生まれる摩擦音や車輪が奏でる重低音がきっちり封じ込めている。要するに録音と音響効果が優れている。列車を演出するならば当たり前のことではあるものの、この土台の部分が頑丈であるがゆえに、その魅力にグイグイ引きこまれていくことになる。

 脱線させようと思ってもそれすらできないモンスターを停車させる最善の方法は何か。主人公たちが辿り着く方法が、いかにもアメリカ的で大笑いする。エネルギーの方向を考えると確かに正しいのかもしれない。しかし、あぁ、なんという力技!分かりやすさを完全に味方につけてしまったところ、案外スゴイのではないか。

 モンスターが動き始めてからはずっと緊張感に貫かれている。子どもたちが大勢乗った列車とぶつかるのではないかハラハラさせられる導入部から、事態がどんどん深刻になっていく中盤、拍手喝采のクライマックスまで、ピンと張り詰めた緊張感。ただし、ちゃんと一息つける場面も用意されていて、それがそのまま最小限かつ効率的な人間ドラマとなっているあたり、さり気なく上手い。ブルーカラーの雇用問題、娘たちとのぎこちない距離感、妻への誤解から生まれた敵対関係…。ヴェテラン機関士と新米車掌という中心人物ふたりの違いも過不足なく物語に組み込まれていく。年齢の差と経験の差がサスペンスを盛り上げる。多分これ以上踏み込んだ描き方をされたら、感傷的になるか、或いは大味になるかのどちらかだっただろう。考えの浅いバカも出てくるものの、パニック映画はバカで持つ…ということを考えたら全くの許容範囲。ほとんど少年漫画的なツボの押さえ方により、大切なラストの切り上げも含めて、ギリギリのところを力強く乗り切っている。

 デンゼル・ワシントンとクリス・パインのコンビネーションも悪くない。先輩のワシントンが後輩のパインを大らかに迎え入れ、正しく導いている印象が強い。ワシントンが要所要所を引き締めながらも、パインに花を持たせているあたりには感心した。大スターの余裕もあるのだろうけれど、若いスターにエールを贈っているようで。パインもそれに応えるかのように、若さゆえの傲慢さを魅力的に見せることに成功している(「スター・トレック」(09年)と同じパターン)。「蒼い男」路線が無理なくハマるようになってきた。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ