素晴らしきかな、人生

素晴らしきかな、人生 “Collateral Beauty”

監督:デヴィッド・フランケル

出演:ウィル・スミス、エドワード・ノートン、キーラ・ナイトレイ、
   マイケル・ペーニャ、ナオミ・ハリス、ジェイコブ・ラティモア、
   ケイト・ウィンスレット、ヘレン・ミレン

評価:★




 冒頭、大掛かりなドミノが倒れる場面。幼い娘を亡くして以来感情をなくして生きるウィル・スミスが五日間かけて作り上げたドミノ。それが勢い良く倒れていく。ドミノで作られた建物が何棟もがらがらと崩れる、それだけで今のスミスの状態を説明してしまうのだ。『素晴らしきかな、人生』で素晴らしい、唯一の場面だ。

 スミスの同僚たちが仕掛けるある作戦からして気持ち悪い。「愛」「時間」「死」、以前のスミスが大切にしていた概念を俳優に演じさせ、彼に気づきを促すというもの。人の心を弄ぶようなやり口。作り手もそう感じる人が大半であることを承知していたのだろう、作戦に抵抗するキャラクターを置いて保険をかけているのに呆れる。

 しかしもっと呆れるのは、スミスが抱える苦悩やそこからの救済の雑な処理だ。数年間塞ぎ込んでいるスミスの心が「愛」「時間」「死」との会話を通してアッという間に癒らされていくのがバカバカしいことこの上ないし、そもそもその会話が抽象的なやりとりに終始、本気で問題に立ち向かわない自己満足臭の漂うものなのだ。しかも「愛」「時間」「死」に会うのはそれぞれたった2回だけだ。

 何故こんな薄っぺらな掛け合いを見せられなければならないのか。実はスミスを救おうとする友人たちもまた問題を抱えていて…という点を描くべく欲張ったからに他ならない。エドワード・ノートンは離婚して以来娘との関係に悩み、子どものいない人生を送るケイト・ウィンスレットは我が身を振り返り、病と闘うマイケル・ペーニャはそれを家族に告げられず苦しんでいる。「愛」「時間」「死」はそれにも気づき、ワン・オン・ワンで彼らを導く。ご丁寧なことで。

 調子に乗った脚本は、どんでん返しのつもりなのだろう、終幕にある仕掛けを明らかにする。これがトドメだ。良い話風にまとめたと得意気になる作り手の顔が見える。けれど実際にここに浮上するのは、感傷に流され、破廉恥に人の心に踏み込み、そればかりか人間の最もデリケートな部分を軽んじるという、罪深き行為に過ぎない。「愛」「時間」「死」を演じるキーラ・ナイトレイ、ジェイコブ・ラティモア、ヘレン・ミレンの誰が最悪の役を演じたのか、判断は非常に難しい。

 作り手は可哀想な人々に手を差し伸べる快感に浸っている。あぁ、良いことをした。誰もが救われないといけない。きっとこれからの人生は美しく見えることだろう。善意というものに対する向き合い方をこんな風に単純化できる厚顔な監督とは誰なのか。なんとデヴィッド・フランケルだから眩暈を覚える。あぁ、「マイアミ・ラプソディー」(94年)が懐かしい。





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