夢と犯罪

夢と犯罪 “Cassandra's Dream”

監督:ウッディ・アレン

出演:ユアン・マクレガー、コリン・ファレル、ヘイリー・アトウェル、
  サリー・ホーキンス、トム・ウィルキンソン、フィル・デイヴィス、
  ジョン・ベンフィールド、クレア・ヒギンズ

評価:★★★




 ウッディ・アレンは小細工しない。アレンが描き出す不条理劇は、コメディになるにしてもスリラーになるにしても、己のスタイルを崩すことなくマイペースに物語が語られていく。そうして出来上がるのは他のどの監督とも違う紛れもないアレン映画。もはや彼の作品は「アレン映画」というジャンルである。

 マイペースと言ってものんびりとはならないのが可笑しい。アレン映画の登場人物は誰も彼もがせかせかしていて、落ち着くことがない。いや、実際に動きがない場面もあるのだけれど、そういうときでもどこかふわふわそわそわしている。そこへ来てアレンならではの決定的場面を見せない省略術があるから、案外スピード感もあるのだ。独特のリズムが作り出され、リズムそのものが快感になっていく。

 『夢と犯罪』はそういうアレン映画の特長を分かりやすく具えた作品で、全体の雰囲気としては犯罪スリラー(もっと言うならフィルムノワール)の空気が前面に出ている。大金が早急に必要になった兄弟が伯父に殺人を依頼され、次第に運命と偶然に翻弄されながら堕ちていく話は、ちょっとギリシャ神話を連想させるところがあるのだけれど、事件そのものにはさほどコクがなく、後味があっさりしたものに終わっているのが残念だ。クライマックスばかりではなく、場面場面で余韻を感じたい。捻りの利かせ方が生温いと言うか(珍しく女たちの描き方が薄い)。せっかくのアレン映画の魅力が事件の淡白さにより存分に引き出されていないように思う。

 ただし、それでも退屈はしない。いつも通りキャスティングが冴え渡っているからで、中でも兄弟を演じるユアン・マクレガーとコリン・ファレルのケミストリーが素晴らしい。惚れ込んだ女のためにも投資を成功させたい兄=マクレガーとギャンブルから抜け出せず借金に塗れる弟=ファレル。いずれも近年目に見えて味わいを膨らませている英国俳優ふたりだ。もはや若手とは呼べないものの、若い頃にはなかった柔軟さが感じられ、それが互いの存在を複雑に絡ませる。はっきり言って、彼らが一緒の画面に映る、たったそれだけである種の芸術である。アレンもそれを大いに意識した画面作りをしている。そこのところに気づくと、事件の単調さに関してはさほど重要なことではないように思えてくるから不思議だ。ダメ兄弟が愛しくて堪らなくなってくる。

 兄弟の伯父を演じるトム・ウィルキンソンもさすがに巧い。特に雨の中で殺人を依頼する場面のセリフの捲くし立て方は大いに見もの。もしかしたらアレンが演じてもおかしくない役柄を、別の角度から輝かせている。マクレガー、ファレルとのスリーショットも充実している。





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