沈黙 -サイレンス-

沈黙 -サイレンス- “Silence”

監督:マーティン・スコセッシ

出演:アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライヴァー、
   リーアム・ニーソン、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、
   窪塚洋介、笈田ヨシ、小松菜奈、加瀬亮、シアラン・ハインズ

評価:★★★




 鎖国時代の日本。17世紀の日本ではキリスト教が禁止され、キリシタンは厳しい弾圧下に置かれていた。この史実にまさかアメリカ映画で再会することになるとは…。マーティン・スコセッシが当時の日本を復元する。タイトルにある『沈黙 -サイレンス-』を続けるのが、神であることがミソだ。

 別に信仰の自由を高らかに謳い上げる映画ではない。それは当たり前の前提として掲げた上で、僅か数百年前にこの日本起こっていた野蛮な出来事を凝視、人間というイキモノの複雑怪奇な内面を炙り出す。そこでは人の強さと弱さが激しいせめぎ合いを見せている。生きていく上で本当に大切なものは何か。それを守るためには何ができるのか。スコセッシは厳しい目を貫く。

 アンドリュー・ガーフィールド扮する宣教師セバスチャン・ロドリゴが目撃する迫害の現実。首を刎ねられたり、海の中に磔にされたり、逆さのまま宙吊りにされたり。非人間的行為の数々と同じように目に残るのが、踏み絵場面だ。金属板に描かれたイエス・キリストの姿。キリシタンたちはそれを踏む、たったそれだけを強く拒む。そのときだけ踏み、後は密かに信仰を続ければ良い。…そんな単純さを否定する人々の崇高な矢が胸を射る。

 ロドリゴは彼らに何ができるのか、苦悩する。踏み絵を踏むことは安全に繋がる可能性が高くなるものの、信仰への罪悪に苦しむことになるだろう。かと言って踏み絵を拒めば、自分だけでなく家族の死が待っている。希望の拠り所である信仰が、信者たちをもはやどこに進めば良いのか分からない袋小路に追い込む、その矛盾。日本特有の宗教観に触れて愕然とするロドリゴは、彼らの苦悩まで受け止める。

 しかも、彼の傍らにキチジローなる若い男がまとわりつく。人の弱さから逃れられないキリシタンである彼は、あっさり密告に走っては懺悔をすることを繰り返す。ロドリゴは呆れながらも彼を見捨てられない。ロドリゴとキチジローの関係に映画のテーマを集約させていく展開が巧い。ロドリゴがキチジローの懺悔を聞く場面が度々出てくる。そしてその度にロドリゴの心象は異なっている。日本での過酷な体験を通じたロドリゴの心の旅がひりひりと浮上する。いつしかロドリゴは神の沈黙の意味を知る。

 広々とした長崎の自然を舞台にしながら、国全体が牢獄のように感じられる撮影。緊迫感を途切れさせない編集。自然の音が人々に絡みつく不思議な感覚。いかにもスコセッシらしい空間に放り込まれたガーフィールドが繊細な佇まいのまま、堂々作品を背負う。時代の目撃者に終わりかねない危険を秘めた立ち位置にいながら、彼の心境の変化こそにドラマがあることを忘れさせない。日本人キャストも概ね健闘(いちばん旨味のある役柄を与えられた窪塚洋介はやや演技が過剰だったか)。時代劇を描くとコミカルな方向に逃げがちな日本映画界は、この映画をどう受け止めるのだろう。





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