アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 “Eye in the Sky”

監督:ギャヴィン・フッド

出演:ヘレン・ミレン、アーロン・ポール、アラン・リックマン、
   バーカッド・アブディ、ジェレミー・ノーザム、フィービー・フォックス、
   イアン・グレン、バボー・シーセイ

評価:★★★★




 ドローンを大々的に取り上げた映画と言うと、「ドローン・オブ・ウォー」(14年)がある。あちらがドローンを操縦する兵士の焦燥を念入りに描いていたのに対し、『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』はドローンが主役となる現代の戦争をもっと大きな目で、俯瞰で捉えた印象だ。ドローンが兵器として使われるというなら、「24 -TWENTY FOUR- リブ・アナザー・デイ」(14年)、或いは「HOMELAND ホームランド」(11年~)に近い。

 これが今の戦争だと言われてもなかなか慣れない。作戦の指揮を執る英国諜報機関大佐のヘレン・ミレンや彼女と密に連絡を取る国防相のアラン・リックマンはロンドンから、ドローン操縦士はラスヴェガスから、テロリストたちはナイロビにいて、そこには英国軍がサポートする現地人も潜む。全く異なる地点にいながら、しかし彼らが繋がっている不思議。奇妙だ。ミレンなど、物語の大半でモニターを見つめている。ある者は便座に腰かけて議論に参加する。またある者は卓球大会の合間に指示を出す。

 ドローンが彼らを結びつける。巨大なそれがナイロビの上空に浮かび、テロリストに照準を合わせ、たったの50秒で着弾するのだ。鳥や虫の形をした超のつく小型ドローンは、ほとんど玩具ではないか。けれど、それがなくては成立しない作戦。

 それでも押す押さないの決定は人間でなくてはできなくて、そこにドラマが浮上する。ここではターゲットの至近距離に全く無関係な少女がいることが判明することで関係者に動揺が走る。彼女を見殺しにすれば任務は達成されるものの、彼女の安全を考慮して爆弾投下を諦めれば自爆テロにより80人が死ぬ。その予測が天秤にかけられる。これ自体はよく聞かれる問い。それでもそこに至るまで予想以上に多くの人間の判断が入り込むことで(それぞれの役割が的確に示される)、緊迫感、切迫感、焦燥感が恐ろしく膨れ上がる。

 爆弾投下が投げ掛けるのは、少女の命と80人の命の重さ云々だけではない。この事件が大々的に伝えられる先にある、テロリストと連合国軍の宣伝戦にも大きな揺さぶりをかけることになるだろう。人としてどうか。仕事としてどうか。国の立場ではどうか。戦争が善人が悪人に立ち向かう、そんな構図には落とし込めないのは当たり前でも、事態はいよいよ複雑さを極める。映画はそれを、編集の技を駆使することで緻密に織り上げる。

 アンサンブルが素晴らしい。ミレンは彼女がミレンであることを証明し、リックマンは単調な画面になる危険のある会議場面に刺激を忍ばせる。個人的に嬉しかったのは、ナイロビで危険な任務に当たる男役で、バーカッド・アブディが出てきたことだ。「キャプテン・フィリップス」(13年)で異様な存在感を見せたアブディが、やはり強烈な眼差しでナイロビの地を睨みつける。

 後味は決して良くない。重いものがのしかかる。救いがあるとするなら、こういう映画が作られるだけの葛藤を持つ人々がいるということか。既に心が麻痺してしまった人、或いは己の正義を信じて疑わず、その障害になる者の排除に躊躇わない人には、この物語は何の意味も持たないことだろう。少なくともこの映画は、今目の前にある怖ろしい世の中に果敢に立ち向かっている。





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