スプリング・フィーバー

スプリング・フィーバー “Spring Fever”

監督:ロウ・イエ

出演:チン・ハオ、チェン・スーチェン、タン・チュオ、
   ウー・ウェイ、ジャン・ジャーチー、

評価:★★★




 監督のロウ・イエは「天安門、恋人たち」(06年)で中国ではタブー視されている天安門事件を描き、当局より5年間もの間、映画製作を禁止されたのだという。その処分を無視してゲリラ的に撮り上げたのが『スプリング・フィーバー』とのこと。当然のことながら製作は困難を極めたことだろう。そんな事情を知らなくても低予算で作られた作品だということは丸分かり。全編に渡って使用されたのが家庭用のデジタルカメラというのだから。

 正直なところ、何が映っているのか判断し辛い場面は少なくない。映画という芸術は光を緻密に捉えることがいかに大切かということが良く分かる。しかし一方で、これが功を奏しているところもある。いや、プラスになっているところの方が多いと言っても良いかもしれない。登場人物の個々の魂が剥き出しになり、これがなかなかの迫力なのだ。生々しくて、しかも真実味もたっぷり。

 幾度となく挿入されるラヴシーンが強い印象を残す。南京に住む男女5人が、時に感情を激しく押さえつけながら、時に本能が趣くままに、誰かを強く求める、その動物的な部分が強烈。合体して腰を振っている行為そのものよりも、肌と肌が意識的に触れ合わせる場面が、低い体温が伝わってくるようでイイ。胸と胸がぶつかり合う抱擁や背中を這う指の動きなど、熱がこもっている。彼らの中に蠢く何かが感じられる。求めることそのものへの渇望が嘘臭くない。

 しかし、そうして浮かび上がるのは人生賛歌なんかではない。見えてくるのは孤独という辛辣な空気。人の温かさなんかは吹き飛ばされてしまい、後に残るのは、人は結局一人なのだ、という圧倒的な寂しさだ。旅に出た3人が船に乗る場面がある。このとき3人が向いている先が全く違うことに気づく。彼らは同じ未来に向かってなどいない。

 『スプリング・フィーバー』は物語を語るというよりも人間そのものを描き出した映画なのだろう。この世に生きる誰一人として同じ生き物ではなく、それゆえ求め合い、傷つけ合い、離れていく。そしてその事実からは決して逃れられない。





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