胸騒ぎのシチリア

胸騒ぎのシチリア “A Bigger Splash”

監督:ルカ・グァダニーノ

出演:ティルダ・スウィントン、マティアス・スーナールツ、
   レイフ・ファインズ、ダコタ・ジョンソン、オーロール・クレマン

評価:★★★




 「ミラノ、愛に生きる」(09年)ではミラノの上流階級を舞台に鮮やかなる様式美を炸裂させたルカ・グァダニーノ。『胸騒ぎのシチリア』を包み込むのは、一転、淡い色彩だ。海のブルーも、木々のグリーンも、土のブラウンも、泥のグレイも、そして人の肌の色もホッとするような慎ましさ。目の奥に溶けていくような感覚を覚える。

 当然か。舞台はシチリア。この開放的な土地にごてごてした色は似つかわしくない。シチリアの色をそのまま画の中に収める。それこそがグァダニーノの最優先事項だったに違いない。活かされるのは自然光。色の優しさと、その裏側に隠れた僅かな濁り。光を味方につけることで、シチリアを手に入れる。

 シチリアの丘の上に佇む別荘で展開されるのは、メロドラマ風の駆け引きだ。声帯の手術をしたばかりで声が出ない女ロッカー。彼女の恋人で肉体美溢れる若いドキュメンタリー監督。騒がしく下品で自己中心的なロッカーの元恋人。血縁関係が判明したばかりのその娘。いかにも何か起こりそうな、けれどどこか漂うチープな匂い。

 それがこの空間にぴたりとハマるから面白い。それぞれ思うところがありながら、決定的な態度には出られない四人。その心象を探り合いながら、距離を揺らす様。退廃と官能を武器に隠し持つ彼らが、後数ミリ、後数秒というギリギリのところで関係の破綻を回避していく。しかし…。元恋人がロッカーに言う。「あいつは君の首に鈴をつけたな」。ロッカーは返す。「それが嬉しいのよ」。

 ヒロインがロッカーであることを利用して、音のデザインも遊び心いっぱいのそれになっている。バックに流れる音のいちいちが肌に刺さるようにひりひりしたものとして届けられるのだ。その場面に見合った音楽が選ばれることもあれば、全くそぐわないそれが前面に出ることもある。目にも耳にも場面が焼きつく。

 配役が素晴らしい。淫らな透明感のティルダ・スウィントン。野性味と穏やかさを同居させるマティアス・スーナールツ。ハイテンションで突っ走るレイフ・ファインズ。危険な肉体で挑発するダコタ・ジョンソン。画面をかき乱す儲け役はファインズ。しかし個人的にはスーナールツに感心する。恋人がかつて愛した男。同じ屋根の下にいることを歓迎するはずがない。その思いを抑え込む様、的確だ。それにスーナールツはスウィントンのような個性の塊のような女優の隣にいて何の違和感も感じさせない。本物である証拠だ。





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