ジュリエッタ

ジュリエッタ “Julieta”

監督:ペドロ・アルモドヴァル

出演:エマ・スアレス、アドリアーナ・ウガルデ、ダニエル・グラオ、
   インマ・クエスタ、ダリオ・グランディネッティ、ミシェル・ジェネール、
   スシ・サンチェス、ロッシ・デ・パルマ

評価:★★★




 ペドロ・アルモドヴァル映画のヒロインは相変わらず、その瞳に吸い込まれそうな魅力を具えている。男よりも女の心の宇宙に親密なアルモドヴァルの感性は、決して記号化できるものではない。女という生き物を形作る細胞の神秘を丁寧に読み解いていく。『ジュリエッタ』では罪の意識や悔恨に囚われた女の半生を悠然と語る。

 若き日の女にはどこか獣の匂いがあり、かつ官能的な佇まいだ。電車の中で偶然男と知り合い、互いに引き寄せられ、そして求め合う、当たり前のことにふりかけられたたっぷりの磁力。老いた女でも最初は娘であることに気づかされる。そして、娘はいつしか母となる。

 当初は幸せだった母と幼い娘の関係はしかし、ある事故をきっかけに歯車が軋み始める。そしてしばらくの後、歯車は軋むどころか噛み合わなくなり、最終的は木っ端微塵に砕け散る。そのときの母の焦燥がこれほどまでに切なく迫るのは何故だろう。もはや母と娘の関係はなかったものとしたいのに、そうできない。

 浮上するのは母と娘の繋がりの不可思議さだ。女は魂を削って子を産み落とす。その命懸けの行為を経て形成される関係には、同性同士ということもあり、何とも言えないえぐ味と神聖さが同居する。アルモドヴァルはそれを捕まえてみせる。愛憎などという言葉の向こう側にある奇怪と言って良い、脆く、それでいて耐久性のある見えない糸、それを見逃さない。

 ヒロイン、ジュリエッタはふたりの女優が演じる。エマ・スアレスとアドリアーナ・ウガルデ。全く似ていないふたりに同じ役を充てながら、アルモドヴァルは時間の経過がそれに与える、偶然とも必然とも言い切れない変化を愛でる。残酷で、でも優しげで、不寛容なようで、でも寛容で…。どちらのジュリエッタも強烈に目に残る。

 もちろん独特の色彩感覚は物語に熱と冷静さをもたらす。青や黄色も強いけれど、やはり赤の主張が素晴らしい。深読みし過ぎだと承知しつつ、血の色、それも母の胎内を流れる血の色に見える。それがジュリエッタを苦しめているような、むしろ見守っているような、不思議な余韻で包み込む。哀し気な空気に支配された物語に生命の息吹を見る。





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