92歳のパリジェンヌ

92歳のパリジェンヌ “La dernière leçon”

監督:パスカル・プザドゥー

出演:サンドリーヌ・ボネール、マルト・ヴィラロンガ、
   アントワーヌ・デュレリ、グレゴアール・モンタナ、
   ジル・コーエン、ザビーネ・パコラ

評価:★★★




 ドラマは92歳の老女の誕生日パーティから転がり出す。彼女は二カ月後の10月17日に、死ぬことを宣言するのだ。自ら人生に幕を下ろす。それはすなわち「自殺」であるわけで、当然周囲は猛反対する。『92歳のパリジェンヌ』は老女の決断を納得いくところに決着させられるだろうか。

 結論から言うと、老女の決断に至る心境の描き込みは食い足りないものがある。階段をひとりで上り下りできない。車の運転が危うい。コートを着るのすら億劫だ。できないことがこれ以上増え、家族に迷惑をかけるくらいなら、気力のある今の内に死にたい。「尊厳死」という言葉を使えば案外悟りやすい心境以上のものは浮上しない。

 それよりもむしろ、彼女を送る側の心模様が見ものだ。老女は娘に言う。「スイスに連れってくれとは言わない。ただ、受け入れて欲しいの」。愛する肉親が自ら命を絶つ。それを受け入れることは、もしかしたら死を選ぶことよりも難しいことかもしれない。物語は息子や娘、その家族、介護人らの目を通し、十人十色の心の揺れを追う。

 とりわけ中心となる娘をサンドリーヌ・ボネールが演じたことは幸運だった。母の決断を最初は拒絶しながらも、次第に母の心の宇宙へと入り込み、優しく手を差し出すようになる過程を、ボネールは特に飾り立てることなく、むしろ抑えに抑えた演技で魅せる。ボネールが夜中のスタジアムで走ることで、己の想いを解放させる件は、名場面だ。

 もちろん死の決断を受け入れたからと言って、哀しみは避けられるわけではない。遂にその日が来たとき、ボネールやその家族が見せる何とも落ち着かない様子が目に沁みる。そしてそのとき思うのだ。母が宣言してから今日に至るまでの二カ月が、それぞれの立場から自分がいかに母を、義母を、祖母を、親愛なる友人を愛していたのかを知るための期間になっていたことを。

 作り手はそれぞれの反応をジャッジしない。母の決断を受け入れられない息子の態度は物分かりの悪い駄々っ子になりかねない。また、最初は平然としていた孫が無力感に包まれていく様は頼りなく映る危険がある。それらを周到に回避し、あくまで老女の決断をどう受け止めるかは観る者に委ねている。誠実な態度だ。美しくまとめ過ぎた嫌いはあるものの、この立ち位置が問題を多角的に見せている。





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