われらが背きし者

われらが背きし者 “Our Kind of Traitor”

監督:スザンナ・ホワイト

出演:ユアン・マクレガー、ナオミ・ハリス、ステラン・スカルスガルド、
   ダミアン・ルイス、アリシア・フォン・リットベルク、ヴェリボール・トピッチ

評価:★★★




 原作小説はこのところ映画化が続くジョン・ル・カレ。不勉強なことに先頃知ったばかりなのだけど、彼は実際にMI6で働いていた異色の経歴の持ち主らしい。なるほど通りで彼の世界観の中ではスパイが、ジェームズ・ボンドやイーサン・ハントのように大活劇を繰り広げないわけだ。悪役にも現実感があるし、スパイは代わりに生活感を獲得する。

 しかも『われらが背きし者』など、主人公のユアン・マクレガーは完全にフツーのオッサンだ。ロンドンの大学教師である彼の目を通して目撃するその世界は、ざらざらと、ひりひりと、ちくちくと、直の手触りを感じることができるほどに生々しい。当たり前のことではあるものの、諜報員やその周辺人物も生きることに不可欠な衣食住問題や抑えられない欲求を抱えていることが良く分かる。

 したがってここには、多くのスパイ物に用意される派手なアクション場面は見当たらない。地味だが痛みを伴うアクションがちらほらあるくらいだ。代わりに心理的駆け引き・腹の探り合いと密着したサスペンスが幅を利かせる。常に見張られているある人物がいかに重要機密を渡し、かつ自身や家族を安全なところへ避難させられるか、細かい作戦を繰り返すことで、魅せていく。

 マクレガーとその妻ナオミ・ハリスは狂言回しに落ち着いているところが多く、その点で物足りなさを感じる。夫婦の危機にあったふたりが、とりわけ成功した弁護士の妻にある引け目を感じているマクレガーが、作戦を通して生命力に似た何かを得ていくのを描くのであれば、さすがにもう少し大胆に動かしても良かっただろう。巻き込まれ型サスペンスとしては小さくまとまったか。

 ただその分、組織を裏切るロシア・マフィア役のステラン・スカルスガルドには見せ場が連続する。冷静で冷たい目の奥に人間的臭みをたっぷり宿した人物として鮮やかに動く。彼と接触するMI6エージェント役のダミアン・ルイスも任務と正義の間を魅力的に行き来する。ヨーロッパ各国の風景の中に彼らは柔らかに溶け込む。

 マクレガー、スカルスガルド、そしてルイスの男三人の間に流れるものは物語の隠し味だ。男たちが向き合う方向はそれぞれ異なる。異なるけれどしかし、それぞれの決意や信念が交錯するとき、強烈な磁力を発する。それが見逃されない。直接的なセリフはなくともその心象を察する男たちが美しい。





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