ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ “Genius”

監督:マイケル・グランデイジ

出演:コリン・ファース、ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、
   ローラ・リニー、ガイ・ピアース、ドミニク・ウエスト

評価:★★




 情けないことこの上ないものの、咄嗟に思いつく有名作家と編集者のカップリングと言うと、伊佐坂先生とノリスケになる。けれど、『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』の中心に立つふたりはホンモノだ。作家はトマス・ウルフ。そして彼を見出す編集者がマックス・パーキンズだ。

 このパーキンズがとにかく大変なキャリアの持ち主で、ウルフだけではなくアーネスト・ヘミングウェイやF・スコット・フィッツジェラルドの代表作も世に送り出したのだとか。20年代、アメリカ文学「失われた世代」はパーキンズなくして成立しなかった…のかもしれない。

 かもしれない…というのは、パーキンズの偉大さがいまいち伝わらないからだ。ハリスが持ち込む作品は超のつく大長編という他なく、そのまま出版しては誰にも手に取って貰えないことは確実。そこで的確な目を持つパーキンズの出番となるわけで、彼のアドヴァイスによりハリスは、作品を短く効率的に刈り込んでいく。パーキンズの功績は誰に目にも明らかで、しかし、その過程にあるべき葛藤にはほとんど触れられない。

 葛藤とは、作家の初稿を添削し助言を送ることで、作家の作品を本来あるべき姿とは別のものに改良してしまっているのではないか、という苦悩だ。実際これはかなり際どいところで、パーキンズの抱える闇はそこに集約されているように見受けられる。それなのに、ハリスが作品の成功はパーキンズの編集術のおかげだと陰口を叩かれることで不満を漏らす件に至っても、パーキンスのそれはちっとも掘り下げられない。

 代わりに物語を貫くのは、、パーキンスの善人ぶり、人格者ぶりのこれでもかというアピールだ。文学への的確な目を持つだけではない。人間的にも優れた彼は、思いやりがあり、冷静沈着で、人への気遣いもでき、命の危険に晒されたときでさえ見事な判断力と度胸を見せる。その完璧さが面白味の欠如を招くのだ。もちろんコリン・ファースのせいではない。呑気で、ずる賢く、ちゃっかりしていて、怠け者で、図々しさ全開のノリスケの方が面白い。…というのは、はい、言い過ぎ。

 逆にハリスはやりたい放題だ。パーキンスを困らせるために出てきたのではないかと思わせるほどに、空気を読むことなく無神経に突っ走る。演じるジュード・ロウはファースよりも圧倒的に見せ場が多く、人を身勝手に振り回すという点で、「オスカー・ワイルド」(97年)を彷彿とさせる。それでいて人懐っこくファースに絡む様は、ほとんどブロマンス映画風だ。もちろん余計なアプローチだ。

 まあ、画を眺める分には退屈しない。パーキンズの佇まいに合わせたかのようなグレイの色彩。20年代アメリカの享楽と退廃が衝突する空気感。紫煙の流れに、鉛筆が紙に擦れる音。パーキンズとハリスの妻たちから見える女の社会的立場。ずっと帽子を被り続けていたパーキンスが遂にそれを脱ぎ去る理由は腑に落ちなくとも、その世界の気配に溶け込みたいと思わせるだけの魅力はある。





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