ミッシング・サン

ミッシング・サン “Meadowland”

監督:リード・モラーノ

出演:オリヴィア・ワイルド、ルーク・ウィルソン、ジュノー・テンプル、
   エリザベス・モス、ジョヴァンニ・リビージ、ジョン・レグイザモ、
   メリット・ウェヴァー、タイ・シンプキンス

評価:★★★




 警察官の父親と小学校教師の母親。物語は彼らのひとり息子が、ガソリンスタンドのトイレから忽然と姿を消す場面から始まる。一説によるとアメリカでは一日に1,000人、或いは2,000人の子どもが行方不明になる。一年ではない。一日だ。つまり夫婦は決して他人事ではない悪夢に迷い込む。

 確かにこのところ、子どもの失踪をテーマにした映画は多い。大抵の場合、両親は血眼になり子どもの行方を捜す。しかし『ミッシング・サン』にはそんな場面は出てこない。事件から一年が経ち、捜査は全て警察に任せている。母親など、警察が手掛かりとして見せる証拠品を見ようともしない。そして頑なに言う。息子は生きている。

 そう、テーマは社会問題の糾弾ではない。どうしようもない不幸に見舞われた者の喪失をじっくり眺めるところにある。安定剤が手放せず、グループカウンセリングに通い、会話は少なく、親になる友に喧嘩を売り、自傷行為に走る。無理に明るく振る舞うのは苦しい。でも、沈むだけ沈んではそこから浮き上がれない。自分の肉体の中だけで処理できるタイプの喪失ではない。

 おそらくそれは当事者になってみなければ、いや、当事者同士でも分かり合えない心象だ。父親がカウンセリング仲間に彼の娘を轢き逃げした男の住所を渡す場面。或いは母親が学校で気にかけている生徒の義父と肉体関係を持つ場面。どうしてそういう行為に走るのかの説明をするのではなく、そこにある絶望を掬い上げる。

 メロドラマを避ける演出に役者が応える。ルーク・ウィルソンの平静を装う佇まいとオリヴィア・ワイルドの自分のコントロールさえままならない危険なバランス。絶望の表れ方の異なるふたりが、衝突とは言えないような静かな衝突を繰り返して日々をやり過ごす様が胸に迫る。とりわけワイルドは、ほとんど犯罪行為に走る後半の暴走に精一杯の困惑と哀しみを投入する。理解して欲しいとは言わない。ただ、この思いを感じて欲しいとばかりに。

 安易な希望がことごとく拒否される展開は間違いなく暗い。気分はどんどん沈む。ただそれでも、哀しみの水が決壊する寸前のエンディングには、ある種の清々しさが感じられる。原題の「Meadowland」は牧草地の意味で、ハイウェイ沿いにあるそこに、ある動物が姿を見せるのだ。思わずワイルドが駆け寄る。息子がいなくなって以来止まったままの時が、再び動き出す。哀しみの頂点は同時に、哀しみが癒え始めるスタート地点でもあるのだと。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ