アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち

アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち “Eliza Graves”

監督:ブラッド・アンダーソン

出演:ジム・スタージェス、ケイト・ベッキンセール、デヴィッド・シューリス、
   ブレンダン・グリーソン、ベン・キングスレー、マイケル・ケイン、
   ジェイソン・フレミング、ソフィー・ケネディ・クラーク

評価:★★★




 その精神病院は、19世紀から20世紀に変わろうとしているイギリスの奥地にそびえ立つ。クリスマスイヴ、医師を目指す青年が、最終実習を受けるためそこへやってくる。青年の胸にある言葉が響く。精神世界を目指すなら、聞いたことを信じるな。見たものは半分だけ信じろ。もちろんこれは『アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち』からの観る者への警告でもある。

 果たして踏み入れた病院内部の怪しげなムードが怪奇テイスト好きの心をくすぐる。病院と言っても療養地風の内装で、家具や食器、カーテン、ピアノのデザインや照明の仄暗さなど、なかなか大人っぽい雰囲気を湛えている。もちろん骸骨や実験用のカエルのホルマリン漬け等、いかにもなアイテムもある。

 けれど、いちばんの怪しさは人物から放出される。医院長の高圧的な態度、警備員の馴れ馴れしい振る舞い、看護師の挙動不審な仕事ぶり。青年が恋するピアノ弾きの女はやけに美しい。一度違和感に気づけば、そレが気になって仕方ない。そこで聞こえてくる謎の声。そして、そう、酷く真面目な青年から滲み出るある違和感も周到に…。

 原作はエドガー・アラン・ポーの短編小説のようで、なるほどここにはトリッキーな設定が用意されている。が、これを種明かしするタイミングが早過ぎる。違和感を感じたままにもっと毛穴に沁み込ませるべきは、この院内に漂う、ある種の美だろう。危険で、退廃的で、緊張感に支配され、しかしその先にはどこか魅入られてしまう歪んだ美があるべきだ。それを浮上させることなく、種明かしを起爆剤に物語を展開させるのは早急というものだ。

 でもまあ、おかげで英国の名優たちの怪演を楽しむ余裕はたっぷりある。いかがわしさ全開のデヴィッド・シューリス。過去に囚われて生きるベン・キングスレー。信じて良いのかどうか判断しかねる物言いのマイケル・ケイン。主人公の青年を演じるジム・スタージェスもいつもとはがらりとイメージを変えて、役柄のギリギリのところを綱渡り。

 スタージェスが執着するケイト・ベッキンセールはもっと上手に動かせるはずだ。青年の敵なのか味方なのか。狂っているのか正気なのか。青年が恋に落ちても不思議ではない美貌が、案外一面的にしか輝かない。スタージェスとベッキンセールの距離感はもっと華やかに飾り立てて良い。そうすることで、歪んだ美こそが主役になれたかもしれない。精神医療が抱える問題を突いた先にそれを見せることに、価値がある。





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