ハドソン川の奇跡

ハドソン川の奇跡 “Sully”

監督:クリント・イーストウッド

出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート、ローラ・リニー、
   アンナ・ガン、オータム・リーサー、ホルト・マッキャラニー、
   マイク・オマリー、ジェイミー・シェリダン、ジェリー・フェレーラ、
   モリー・ヘイガン、ヴァレリー・マハフェイ

評価:★★★★




 かの有名なチェズレイ・“サリー”・サレンバーガーがニューヨークの街を走っている。サリーは2009年1月15日、マンハッタン上空でエンジン・トラブルに見舞われた旅客機の操縦士だ。多くの人々の命を救った機長の顔色が優れない。ジョギング中もサウナにいるときも苦悩を浮かべる。夜には悪夢で目が覚める。クリント・イーストウッド監督はその謎を探る。

 事故調査委員会が機長の判断が誤りでなかったかを追及、サリーは厳しい言葉を投げ掛けられる。飛行機はハドソン川へ着水した。しかし飛行場に引き返すことも可能だったのではないか。そうなら無駄に乗客を危険に晒したことになるのではないか。観る者は不安になる。自信があるのなら胸を張れば良い。

 執拗な言葉の応酬やデータやシミュレーションが示す不利な数字がサリーの胸をざわつかせる。しかしそれは、サリーが本当のプロフェッショナルだからこその揺らぎであることをイーストウッドは見抜いている。もし本当に判断ミスだったなら、自分は機を操る資格はない。サリーが着水後、何より知りたかったのが155人という数字だ。それは乗客とスタッフの総数だ。サリーは全員の無事を知り安堵する。そう言えば、どこかの船舶事故では真っ先に逃げ出した船長がいた。

 トム・ハンクスがサリーを演じる。髪を真っ白に染めたハンクスの、冷静な物腰が美しい。慌てず、騒がず、動揺を見せず、名パートナーの副機長(アーロン・エッカート好演)との間にベタつかない、しかし頑丈で頼もしい関係を築き上げる。終幕に立ち上がる男ふたりの「誇り」が本物として感じられる。

 ひとつ面白く見たのは、サリーの不安な表情と裏腹に、サリーに出会うニューヨークの人々が次々彼を讃える場面が出てくることだ。思い出したのは「スパイダーマン2」(04年)。いつも身体を張るスパイダーマンが窮地に陥ったとき、今度は人々が彼を身体を張って守ろうとする場面があったのだ。今回も人々は英雄を本能的に守ろうとしているように見える。俺たちの英雄は俺たちが守る。こういうのに滅法弱い。目頭が熱くなる。決してこれは、サリーを過剰に英雄視しているわけではない。

 『ハドソン川の奇跡』はイーストウッド作品の中でも人間賛歌の匂いが濃い映画だ。人であることが誇らしくなる。9.11の記憶がサリーにも人々にも強く残っていることが仄めかされるのが印象的だ。イーストウッドは厳しい人間観を持ち合わせた人だけれど、それはただ頑固だからではない。優しさと誠実さに裏打ちされたそれだからこそ、真に迫る。そこに一流映画の技術(地味ながら優れた編集技!)が加わるのだ。怖いものはない。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ