白い帽子の女

白い帽子の女 “By the Sea”

監督・出演:アンジェリーナ・ジョリー

出演:ブラッド・ピット、メラニー・ロラン、メルヴィル・プポー、
   ニエル・アレストリュプ、リシャール・ボーランジェ

評価:★★




 アンジェリーナ・ジョリーが監督を手掛けるのは、これが三作目になる。これまでと違うのは自ら主演も兼ねていることで、しかも共演は撮影当時実のパートナー、ブラッド・ピットだ。自身と最も近しい男性との共同作業。自分たちでなければならなかった理由を邪推する。…と思い当たるのは世界を驚かせた、身体にメスを入れる例の決断だけれど、まあ、推測は推測に過ぎない。ただ、その影響を思わせる内容であることは確かだ。

 それにしても『白い帽子の女』を包み込む空気の陰気なこと。ハリウッドを代表する美男美女の主演作とは思えないほどに陰鬱な匂い。男は酒を飲んだくれ、女は心ががらんどうであることが丸分かりの虚無的な表情。もちろんふたりのやりとりは冷たく、素っ気ない。ジョリー、おフランス映画を意識し過ぎだ。具体的にはヌーヴェルバーグ以降のおフランス映画。

 舞台はマルタ島。時代はおそらく70年代。長い沈黙といかにもな音楽。飛び交うフランス語。ジョリーはふたりの関係を煮詰めないままムード作りに励む。冷静に考えれば、何ともまあ傍迷惑な夫婦で、とりわけ妻は無自覚に周囲を傷つけ、しかも他人を傷つけることで自分も傷ついていくという厄介を極める性分。ジョリーはその彼らを愛でる。深刻の粉を振りかけながら。ジョリーはこれを明らかにカッコイイと思って演出している。

 とりわけ構図にこわだりを感じる。視線の移動やその高さの塩梅。ホテルの隣室を小さな丸穴から覗き見るときの視界。ふたりが泊まる海辺の景色を背景に取り込むショット。己の愛する芸術にヒントを得たジョリーが、その愛を高らかに叫び、けれどそれが模倣のままに終わる哀しさよ。明かされる夫婦の真実が見え見えで、それなのにやたら引っ張るのも興を削ぐ。

 やりたい演出をやっているようには見えるジョリーはしかし、自身の女優としてのエゴだけはコントロールことができなかったらしい。精神的にぼろぼろ状態にあるはずのヒロインが、やたらポーズをキメまくるのだ。ダンサーだけあって姿勢が良く、町を散策しても、バーで酒を楽しんでも、窓辺に寝転んでも、床に突っ伏しても、魅せる画であり続ける。涙でアイメイクが崩れても、それも全て計算通り。特に自身の横顔を繰り返し挿入するあたりには、横顔への自信が見て取れる。綺麗だ。綺麗だけれど可笑しい。ピットなんて便所で吐いてるだけで、格好良いところなんてひとつも出てこないのに。

 フィンガー5のようなジョリーのサングラス(何とイヴ・サン・ローランだ)が上下逆に置かれているのを、ピットが直す場面が何度か出てくる。不安定な妻の心を夫がフォローすることが暗示される。ところが、この物語に出てくるふたりは、互いに甘え、傷の舐め合いに終始しているように見える。ジョリーの芸術への中途半端なこだわりが独り善がりの方向に走ってしまった映画だ。





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