レッドタートル ある島の物語

レッドタートル ある島の物語 “La tortue rouge”

監督:マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

評価:★★★




 思いがけず、大きなスケールを見せる映画だ。とっかかりだけでは予想できない。嵐で投げ出されたのだろう、中年男が荒れ狂う海に翻弄され、無人島に行き着く。大抵の映画はここで「ロビンソン・クルーソー」や「十五少年漂流記」方向、或いは「ふしぎの島のフローネ」(81年)方向に舵を切る。『レッドタートル ある島の物語』は「キャスト・アウェイ」(00年)方向に向かうように見えた。ところが…。

 島で生き抜くにはどうしたら良いのか。サヴァイヴァルは驚くほど少ない。木の実の採取や魚の捕獲に重きを置いた場面は極僅か。男はアッという間に筏を作り、島からの脱出を試みる。筏の性能も最初から抜群だ。…にも関わらず、男は島から出ることができない。島が男を欲しているような、何か超常的な力が働いているような。だからと言って「LOST」(05~10年)にはならない。

 叫び声や唸り声はあっても、ほとんどサイレント映画のような世界観に相応しく、ここで登場するのが赤い色をしたウミガメで、男とのカメの掛け合いが不可思議な変態を見せるところに、想像力と創造力が光る。男のカメへの憎しみの感情が表情を変えていくデリケートさ。カメの甲羅が割れてからの距離感に宿るサスペンス。そしてそこに、愛も生まれる。

 ここで立ち止まることを良しとしない姿勢が頼もしい。お伽噺で終わらせまいとする物語はここから、時間の厚みを感じさせるようになる。不敵に流れ行く時間の姿を、島での暮らしの変化を映し出すことで、しかと捕らえてみせるのだ。時に優しく、時に溌剌と、時に残酷に。そしてその先には、生きていく上で避けられない喜びや哀しみが見える。

 絵柄にはさほど特徴がないように見えて、いつしか水墨画のような静けさを湛え始めるから侮れない。輪郭のはっきりした画の中で、派手さのない色が落ち着き払ったままに溶けている。当初工夫が感じられないように思われた人物の表情も、次第に人が自然の一部であることを明確にするストーリーの中にそっと入り込む。

 やはり映画は監督次第ということか、ジブリ映画なのに面白い。イメージの飛躍のさせ方に柔軟性があるし、そこに説教が紛れ込むこともない。たっぷり取られた余白にこそ大切なものを注ぎ込んでいるようにも見える。海の中から上を見上げてみたくなる。





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