ハイ・ライズ

ハイ・ライズ “High-Rise”

監督:ベン・ウィートリー

出演:トム・ヒドルストン、ジェレミー・アイアンズ、シエナ・ミラー、
   ルーク・エヴァンス、エリザベス・モス、ジェームズ・ピュアフォイ、
   キーリー・ホーズ、ステイシー・マーティン

評価:★★




 原作はJ・G・バラードによる小説で、刊行されたのは1975年だという。なるほど納得だ。『ハイ・ライズ』の舞台は40階建てのマンション。風変わりな外観の高層タワーだ。上の階に行くに従って、住人は金持ちになる。この設定と、そこから派生する物語がやけに古臭いのだ。

 いや、やりたいことは分かる。タワーにはスーパーマーケットもプールも学校も病院もあり、住人たちは己の社会的立ち位置を常に意識して暮らしている。見るからに危ういバランス。それがある停電事件をきっかけに暴動を引き起こす。ヒエラルキーが崩壊を始める。分かりやすいにも程がある。…と言うか、ここで描かれることは既に今現在彼方此方で起こっている。皮肉が効かない。

 ならば見せ方を工夫して欲しい。ベン・ウィートリーは主人公にトム・ヒドルストンを起用する。整った顔立ちであることは間違いないものの、どこか爬虫類的気色悪さを湛える人。「マイティ・ソー」(11年)のロキ役は彼の個性が大いに活かされたコミック・キャラクターで、あの掴み所のない感じをタワーに持ち込む。なるほど爬虫類らしくバカバカしくあざとい世界にハマりそうだ。

 実際ヒドルストンは悪くない。表情をほとんど変えないままに、刻一刻と表情を変えるタワーの粘り気ある空気に難なく溶け込んでいる。今最も血糊が似合うスターとしての一面も(ついでにペンキが似合うスターとしての一面も)証明する。けれど、そのヒドルストンから狙ったに違いない「退廃」や「官能」が立ち上がらない。

 ヒドルストンのせいではない。演出にしつこさが足りないのだ。小説の世界を分かりやすく映像化することには熱心でも、そこに蠢く人間という生き物があくどく動く、どうしようもない本性に対しては、奇妙なまでに淡泊。下層階の者が上層階の者に襲い掛かる、それが記号化されるばかりだ。ジェレミー・アイアンズやルーク・エヴァンスの動かし方など、何ともまあ、予想通り。

 ヒドルストン演じる主人公は25階の住人だ。中の上のレヴェルで暮らす彼のアクションにも特別なところはない。ほとんど事件の目撃者的役割しか果たさない場面も多い。勿体ないことだ。ヒドルストンの個性も、主人公の上でも下でもない立ち位置も、もっと大胆に装飾する余地があるだろう。小さく分かりやすい空間に落とし込んでしまった。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ