それでも、やっぱりパパが好き!

それでも、やっぱりパパが好き! “Infinitely Polar Bear”

監督:マヤ・フォーブス

出演:マーク・ラファロ、ゾーイ・サルダナ、イモジェン・ウォロダースキー、
   アシュリー・アウフダーハイデ、ジョージア・ライマン、
   ベス・ディクソン、ケア・デュリア

評価:★★★★




 マーク・ラファロを嫌いになるのは難しい。どれだけ困った振る舞いがあっても心根の優しさを信じずにはいられない空気を醸し出すからだ。「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」(00年)では姉を困らせたラファロが、『それでも、やっぱりパパが好き!』では子どもたちを困らせる。彼は双極性障害なのだ。

 ここには危険なトラップがふたつ仕掛けられる。ひとつは難病映画へと誘う罠。躁鬱病特有のアップダウンを強調し、その症状の過酷さと周りの人間の大変さを高らかに掲げることを良しとする。もうひとつは子どもを道具に涙を搾り取る厚かましさへの道。子どもの健気な態度で涙腺を刺激し、それを感動だと言い包めることを恥ずかしく思わない。

 それを軽やかに切り抜けるところこそ、この映画の最大の手柄だ。もちろんラファロは子どもたちを振り回す。仕事には就けないし、家事を完璧にこなせるわけでもない。子どもたちに当たることもしばしばある。かと思えば次の瞬間には、勘弁してと言いたくなるほど子どものような無邪気な態度を見せる。躁鬱病の厄介なところは漏れなくついて回る。けれど、彼を見せ物にする態度は避けられる。それに至るまでの心の揺れは見逃されない。

 子どもたちも父親に不満を漏らす。面倒を看て貰って当たり前の年齢のふたりの少女たちが父親と衝突する。不満を言うし、怒りもする。けれど、どれだけ振り回されても、父親を愛する気持ちだけは揺るがない。そしてそれが押しつけがましく映らない。

 マヤ・フォーブスはそのために作為を排除した。ここにはドラマティックな展開がないのだ。子どもたちが父親の面倒を看ないといけないくらいの育児放棄になることも、ソーシャルワーカーが悪者になって家族の絆を試されることも、双極性障害ゆえの行動が原因で誰かの命が危険に晒されることもない。唯一母親の決断は映画的だけれど、それも母親の愛情を的確に掴まえることで、偽善に見せない。そういう作為から生まれるものを嫌うフォーブスは、日常のすったもんだに焦点を絞り、幸せの意味、家族の在り方を静かに問い掛ける。温もりを忘れることなく。

 そう、これがポイントだ。フォーブスが目指すのは、そこにある家族の肖像とその根底に敷かれた父親、母親、そしてふたりの子どもの心根の優しさを掬い上げることだ。そのためには語る側も捻くれた態度で物事を見るべきではないと、本能的に悟っているように思われる。どのエピソードも(胸が痛むエピソードも)、まるで家族の理想のような着地点に到達する。それを気持ち悪く見せないのは、作り手の立ち位置が正確だからだろう。

 ラストシーンが素晴らしい。それまで切っても切り離せない関係にあった父親と娘ふたり。それがある環境変化があり、自分を形作る細胞は結局自分が作り出すものであることを自覚した上での姿。そこには成長にまつわる寂しさが漂う。ただし、寂しさは清々しさや爽やかさに形を変える。怒涛の日々は必要な時間だったのだと告げる。





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