COP CAR/コップ・カー

COP CAR/コップ・カー “Cop Car”

監督:ジョン・ワッツ

出演:ケヴィン・ベーコン、ジェームズ・フリードソン=ジャクソン、
   ヘイズ・ウェルフォード、カムリン・マンヘイム、シェー・ウィガム

声の出演:カイラ・セジウィック

評価:★★★★




 家出中の少年ふたりがパトカーを盗む。しかし、それが悪徳保安官が所有するものだったから、さあ大変。このプロットだけだといかにもB級映画の匂いがする。そしてそう、『COP CAR/コップ・カー』はB級映画だ。ただし、その味わいはなかなか大人っぽい。細部まで職人芸が行き届いている。

 第一に画が面白い。舞台ははっきりしないものの、相当の田舎だ。低い草木が茂る草原。森と言うには疎らな木々。どこまでも続く一本道。横切るのは人ではなく牛。敢えてだろう、ロングショットが多く、寂しくも光が少なくない風景が意外なほど表情豊かで、時に詩情すら感じさせる。

 とは言え、ここで欲望に向けて突っ走る人間たちは皆滑稽だ。保安官を演じるケヴィン・ベーコンだけ取り出しても、それは明白だ。ドラッグ絡みのトラブルで仲間を殺してしまったベーコンは怖ろしい本性の持ち主ではあるものの、パトカーを盗まれ絶体絶命の窮地に陥る佇まいは可笑しい。何となく大泉晃を思い出してしまうように可笑しい。

 死体を処理しようとすれば、死体が重いわ、せっかく運んだのにどこかで死体の靴が脱げてしまうわ、コケるわ、パトカーは盗まれるわ。事態の深刻さに気づき、ランニング一丁で大きなバッグを抱えて、草原を懸命に走る画のバカバカしさもどうだろう。愛すべき小悪党がそこにいる。ただし、彼に同情を寄せたいなんて、これっぽっちも思わない。引くべき線はしっかり引かれている。

 少年を保安官が追いかける、そして保安官をベーコンが演じる。これだけだと「激突!」(71年)のようなスリラーを連想するものの、少年とベーコンが実際に絡むのは終幕になってからで、ピンチに次ぐピンチ、それをどうやって切り抜けるのか、なんてサスペンスはほとんどない。細部の捻りこそが見ものだからだ。車のカギを靴ひもを使って開ける技。スピード違反で止められた際の警官の撃退法。警察無線の開放手順。現実的かどうかは別にして、小さな細部を積み重ね、それにより物語の充実を導く技は、気長で大らかで、愛嬌たっぷりだ。トランクに閉じ込められていた男(血糊メイク、最高)や通りすがりのデブのおばさんの動かし方も捻られている。

 …というようにB級スリラーの匂いをまといながら、実は手荒いカミング・オブ・エイジ ストーリーなのも面白い。そう、実はベーコンは脇役で、あくまで主役は少年ふたりだ。冒頭草原を歩きながら卑猥な言葉を並べる彼らは、家出なんて企ててもまだまだ小便臭いガキ。運転経験のある車はマリオカートだけなのに、互いに背伸びをするものだから事態は悪化する。

 大人を馬鹿にしながら、また或いは大人に絶望しながら、そして自分たちは大人とは違うと信じながら、でも結局彼らは自分たちがまだまだ子どもであることを突きつけられる。それを認めたとき、成長が始まる。…ということが、時間の流れが緩やかな風景の中にじわじわと浮上する。彼らの運命は色々な意味で予測不能だ。クライマックスで車のスピードが上がっていくのは何を意味するのか、ただそれだけで色々な見方ができる。作品を手掛けたジョン・ワッツという男、なかなか侮れないと見る。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ