トロン:レガシー

トロン:レガシー “TRON: Legacy”

監督:ジョセフ・コシンスキー

出演:ギャレット・ヘドランド、ジェフ・ブリッジス、
   オリヴィア・ワイルド、マイケル・シーン、ボー・ガレット、
   ブルース・ボックスライトナー、ヤヤ・ダコスタ、セリンダ・スワン、
   ジェームズ・フレイン、エリザベス・マシス

評価:★




 ヒロインのオリヴィア・ワイルドがなかなかイイ。アイラインが黒く塗りたくられた切れ長の目が艶かしく、ネコのようなヒョウのような鋭さを具えている。ボディラインがくっきり分かるスーツをシャープに着こなし、何よりボブカットになりそうでならない黒髪が鮮烈な印象を残す。その佇まいからは「シカゴ」(02年)のときのキャサリン・ゼタ=ジョーンズのような妖気が発散され、画面を自在に支配してしまうほどの存在感。ワイルドこそ、唯一の見もの。

 そう、ワイルド以外の要素は、実に退屈な『トロン:レガシー』である。映画の外見は面白くなりそうな気配を湛えているのに、期待ハズレも良いところ。青をベースに置いた落ち着いた画面に、蛍光のブルーやオレンジのラインがポイントとして使われている。衣装や美術に施された、この光のラインが漂わせるスタイリッシュなインパクトは相当なものだ。ところが、これがすぐに飽きてしまうのだ。目に見えるものに頼り過ぎるがあまり、想像力がちっとも刺激されない。

 画面の印象が「マトリックス」風(99年)だったり、音楽が「インセプション」(10年)風だったり、物語の設定が「GAMER」風(09年)だったり、空中レースが「スター・ウォーズ」風(76年)だったり…なんてことはたいしたことではない。パロディだとかオマージュだとか言えないこともないし。それよりも気になるのは、物語が独り善がりなところだ。ゲームの世界、電脳ワールドに迷い込んでしまう楽しさが全く伝わってこないそれなのだ。「ゲームの世界の住人(プログラム)の反乱」を、最新の視覚効果技術をふんだんに取り入れて装飾することに全力を注ぎ、その虚しさに決して目を向けようとしないところから来ている。アイデアの伴わない技術が生み出す無機質な空間は果てしなく広がるけれど、そこにドラマのうねりと呼べるものが一切ない。当然綺麗な画面を綺麗なままに受け取ることしかできず(3Dの奥行きの美しさはよく出ている)、そこから発展していくことがない。父と息子の関係もとってつけたようなライトな感触。20年ぶりに再会したというのに、早々に互いを分かり合ってしまう父息子。もっとぶつかり合わんかいと文句のひとつも言いたくなる。

 結局これは、ゲーム好きのための映画なのだろう。人工的なものに埋め尽くされたメタリックな世界の中でプレイヤーを動かして得点を稼ぐ、その作業に快感を覚えられる感覚がないと、単純に人間が機械的に動いているだけにしか見えない。どれだけアクションが挿入されても、そこにサスペンスを感じることも不可能だろう。

 そもそも敵役が迫力を欠く。青年の父を演じるジェフ・ブリッジスが、一人二役を務めている。名優とは思えない演技の稚拙さはヘタクソなメイクのせいかと思ったら、なんとコレ、ブリッジスの演技をパフォーマンスキャプチャーにより加工したものだというではないか。なるほど若返らせるためとは言え、なんと愚かなことを!これだったらメイクで強引に若返らせる方がマシというものだ。テクノロジーにより雁字搦めになった世界と同じように、作り手もまた技術に溺れてしまった。ここに創造力というものはない。





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