ターザン:REBORN

ターザン:REBORN “The Legend of Tarzan”

監督:デヴィッド・イェーツ

出演:アレクサンダー・スカルスガルド、マーゴット・ロビー、
   サミュエル・L・ジャクソン、クリストフ・ヴァルツ、
   ジャイモン・ハンスゥ、ジム・ブロードベント、
   ローリー・J・セイパー、クリスチャン・スティーヴンス

評価:★★




 そう言えば、最近ターザンを見かけていなかった。最後に見たのはいつか。パッと思いつく「グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説」は83年だから、さすがに最後ではない。そうか、ディズニー・アニメーションで「ターザン」(99年)があった。「ターザン 失われた都市」(99年)なんてのも記憶にある。ターザンは出てこないものの「ジャングル・ジョージ」(97年)が、ターザンのイメージに一致する気もする。ターザンがモチーフらしいし。

 そんなわけでターザン復活、である。その名も『ターザン:REBORN』。デヴィッド・イェーツはどうやら過去のターザン映画、或いは原作はあまり参考にしなかったらしい。意識したのではないかと敢えて邪推するのは「マン・オブ・スティール」(13年)。物語の前提はフラッシュバックで語り、新しい展開を用意、ストーリーは現実感を最優先し、描写はR指定にならない限界ぎりぎりを目指す。しかし、いちばん同じ匂いを感じるのは、やたら深刻な気配だ。

 そう、21世紀版ターザンは暗い。英国紳士として登場する彼は、すっかり文明社会に溶け込んだ存在だ。故郷のジャングルを想うことはあっても、都会で愛するジェーンと暮らす、それに幸せを感じている。その彼がジャングルで苦境に直面、苦悩の表情を浮かべ、それを決して崩さない。ユーモラスな匂いは排除され、愛する人を取り戻すことだけを考えて走り続ける。大らかさの欠如と言うか、余裕がないと言うか。あ、紅茶を飲むとき、小指を立てるの、やめてくれ。ターザンお馴染みの腰布を巻かないのもどういうつもりか。

 ターザンの紳士性を意識し過ぎた結果、アクションの退屈さを招いてしまったのは誤算だろう。お馴染みの蔓を使ったスウィングに顕著だけれど、視覚効果の助けを借りた美しいアクションが並び、けれどそれが画面の平坦さを招く。近年の多くの失敗アクション映画同様、その罠にまんまとハマる。スローモーションの多用もターザン映画に合っているとは思えない。3D映像の悪影響もあるだろう。

 それにハマり役に思われたアレクサンダー・スカルスガルドが、もうひとつではないか。スウェーデン出身ゆえの仄暗さや陰り、色素の薄さが健康的なターザンのイメージと合致しない。身体は見事に鍛えられているものの、だからと言ってそれが似合うかどうかはまた別の話。スカルスガルドはヴァンパイア向きではあってもターザン向きの容姿ではないのだ。

 スカルスガルドは肉体を酷使したアクションもあまり似合っていない。推測でしかないものの、引きの画が極めて少ない上、カット割りが激しいのは、ひょっとするとスカルスガルドのアクションがあまり格好良くキマらなかったがゆえの、編集段階での苦肉の策なのではないか。だとするならば、草原や熱帯雨林の中を駆け抜ける場面における、ターザンの走り方への違和感も納得できる。

 ターザンは幼馴染がライオンやゾウで、育ての母や義兄弟がゴリラという男だ。野性を解き放ってなんぼの男なのだ。ここでのターザンはターザンに最後まで戻れなかった印象だ。クライマックスの動物たちを交えてのバトルにはさすがに勢いを感じさせるものの、結局胸躍る解放感は得られず仕舞い。ターザンのいちばんの敵は深刻さ・真面目さだったというオチの映画だ。





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