8月までに公開された作品の中でオスカーの可能性があるのは…? 2016

※この文章は、アカデミー賞専門サイトOSCAR PLANETのために書いたものの転載になります[先行公開]。




 前回のオスカーはそう、ノミネーション発表時から「ホワイトオスカー」という言葉で揶揄され続けました。演技賞候補に挙がった全員が白人だったからです。確かに「ビースト・オブ・ノー・ネイション」(15年)のイドリス・エルバは助演男優賞候補に挙がっておかしくない賞レース展開でした。「コンカッション」(15年)のウィル・スミスも可能性は低かったとは言え、候補入りしても文句は出なかったでしょう。個人的には「ストレイト・アウタ・コンプトン」(15年)が作品賞候補を逃したのが、大いに残念でした。

 ただ、この問題が叫ばれたことで、実り豊かな議論ができたかと言うと疑わしいでしょう。アカデミーは早速黒人会員(&女性会員、ラテン系会員、アジア系会員)を増やすことを発表し、事実先頃新たに協会へ招待された映画人はそれを大いに意識したメンバーになっていました。個人的に黒人会員が増えると何故候補の顔ぶれに多様性が出てくるのか良く分かりません(黒人会員は黒人に投票するということでしょうか)。問題を大声で叫ぶ人々が、ホワイトオスカーとなったその結果について文句を言っても、その問題点がどこにあるのかを突かないのも解せないところでした。大凡意味をなさない授賞式ボイコットを訴える者までいました。トニー賞やエミー賞の候補に黒人がいたことで、ホワイトなのはオスカーだけだと叫ぶ幼稚な声が聞かれたのも頭の痛い出来事でした。

 問題の根底に横たわるのは白人を中心にした映画作りが行われているという現実です。Box Officeを眺めれば分かるように、黒人俳優たちはそもそも活躍の場が限られている。ではなぜ黒人に大役を当てた映画が作られないのか。情けないほど単純化して言えば、儲からないからに他なりません。例えば、黒人で固めた映画が拡大公開に漕ぎ着けたとしても、観に出掛けるのは黒人ばかりです。しかも、内容が伴わなければ黒人も積極的に観に行こうとは思わないでしょう。タイラー・ペリー映画のように大ヒットの可能性が高ければ、同じ系統の作品は作られ続けますが、芸術的に広がりを見せる方向に向かうのは難しいはず。また、スミスやデンゼル・ワシントンが主演なら白人も喜んで映画館に駆けつけるようですが、そこまでのスターパワーを持った黒人スターは多くないのです。では、なぜ黒人の大スターは数が限られているのか。ホワイトオスカーの問題を辿っていくと、映画界だけの問題に留まらないことは明らかです。

 とは言え、オスカー会員がホワイトオスカーと叩かれたことを忘れるわけがありません。今年は前回白人一色だった演技賞で、反動が起こると見られています。作品も黒人主導の映画が強いと予想されています。それを察知した各配給会社は、賞が狙えそうな黒人色強い映画の公開を賞レースシーズンに集中して封切る作戦のようです。

 ところで、今年はここまでどんな作品が支持されたのでしょうか。今回は第89回アカデミー賞(主要6部門)が9月上旬に開かれたとしたらどうなるか考えてみました。対象は今年の1月から8月までに公開された作品となります。対象期間が短いので、作品賞は5作品を選びました。もちろん違う意見の方も多いでしょうが、それほど大差ないはずです。大差はないはずですが、あぁ、演技賞は白人俳優ばかりになってしまいました。ホワイトオスカーだと叩かれるでしょうか。




◆作品賞
Café Society(ウッディ・アレン監督)
Hell or High Water(デヴィッド・マッケンジー監督)
Indignation(ジェームズ・シェイマス監督)
ジャングル・ブック(ジョン・ファヴロー監督)*
ズートピア(バイロン・ハワード、リッチ・ムーア監督)

◆監督賞
ウッディ・アレン(Café Society)
ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン(ヘイル、シーザー!)
ヨルゴス・ランティモス(ロブスター)
デヴィッド・マッケンジー(Hell or High Water)
ジェームズ・シェイマス(Indignation)

◆主演男優賞
ジェフ・ブリッジス(Hell or High Water)*
イーサン・ホーク(ブルーに生まれついて)
ローガン・ラーマン(Indignation)
ヴィゴ・モーテンセン(Captain Fantastic)
マイケル・シャノン(Midnight Special)

◆主演女優賞
ケイト・ベッキンセール(Love & Friendship)*
クリシャ・フェアチャイルド(Krisha)
サリー・フィールド(ドリスの恋愛妄想適齢期)
メリル・ストリープ(マダム・フローレンス! 夢見るふたり)*
アニヤ・テイラー=ジョイ(The Witch)

◆助演男優賞
オールデン・エアエンライク(ヘイル、シーザー!)
レイフ・ファインズ(胸騒ぎのシチリア)*
ジョン・グッドマン(10 クローバーフィールド・レーン)
ヒュー・グラント(マダム・フローレンス! 夢見るふたり)*
パトリック・スチュワート(グリーンルーム)

◆助演女優賞
エレン・デジェネレス(ファインディング・ドリー)
キルスティン・ダンスト(Midnight Special)
サラ・ガドン(Indignation)
ケイト・マッキノン(ゴーストバスターズ)
クロエ・セヴィニー(Love & Friendship)




 この中で最も候補の現実味があるのは『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』のメリル・ストリープでしょうか。ストリープに勢いがつけば、ヒュー・グラントの初候補もあるかもしれません。『Love & Friendship』のケイト・ベッキンセールももしかして…?『ジャングル・ブック』が作品賞候補入りしたら面白いと思うのですが(その資格のある作品です)、現実は厳しいでしょう。『Hell or High Water』は高評価ですが、“2016年の「ボーダーライン」”のような匂いを感じます。ジェフ・ブリッジスは助演プッシュになれば、候補に現実味が出てきそうですが、果たして…。

 さて、この中から誰が勝ち抜けるでしょうか(* はその可能性が低くないコンテンダーです)。





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