トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 “Trumbo”

監督:ジェイ・ローチ

出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン、
   エル・ファニング、ジョン・グッドマン、ルイス・C・K、
   マイケル・スタルバーグ、ディーン・オゴーマン、アラン・テュディック

評価:★★★




 赤狩りと言うと、1999年、エリア・カザンがオスカー名誉賞を受け取ったときの会場の異様な空気をどうしても思い出す。知識として得ていた歴史の影を立体的に突きつけられたようで。『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』からはあのときのような複雑怪奇な匂いは感じられない。

 コメディ監督として知られるジェイ・ローチは、深刻な物語をエンターテイメントとして、しかも笑いをふんだんに盛り込んで描く。有り難い試みだ。けれど、それに赤狩りの気配が呑み込まれてしまった嫌いはある。共産主義とは何か、「ローマの休日」(53年)「スパルタカス」(60年)で知られる脚本家ダルトン・トランボが幼い娘に答える場面がある。そこでトランボは、食べる物がない同級生にパンを分けてあげるか否か、例を挙げて説明する。そしてそれがそのままローチの答えだ。時代背景やシステムを考えると、さすがに一面的だろう。

 けれど、『トランボ』は面白い。何と言っても、絶望的状況下をトランボが飄々とサヴァイヴァルする佇まいが良い。別に彼は聖人君子なんかではなく、案外「抜け目なく」事態を切り抜けていくのだ。仲間たちとの丁々発止の掛け合い。聴聞会における脚本家らしい切り返し。天敵との狸合戦。家族を大々的に巻き込んでの復活劇。行動の底にはいつも、論理的確信が横たわる。

 とりわけB級映画会社から芸術性からは程遠い作品の仕事を引き受けて、復活の足掛かりにする件は痛快だ。社長に気に入られるや否や、同じ境遇の仲間にも仕事を振り分けるのもちゃっかりしている。社長が金と女のために生きる合理的(?)人物なのを良いことに、トランボが持ちつ持たれつの絶妙のバランスを取っている感じが可笑しい。

 トランボに扮するのはブライアン・クランストン、いよいよ芸達者なところを見せる。トランボを「偉人」に見せることなく、しかし身体の芯に人が生きていく上で守らなければならないものを美しく通した人物として、タイプを打ち続ける。言論の自由、思想の自由を信じるヴァイタリティの全てが物語を考える頭とタイプする指に向かっている感じなのも、重たい内容をユーモラスに感じさせるセリフ回しも良い。何よりクランストンは大芝居を楽しんでいる。

 クランストンの大芝居を際立たせるため、他のキャストは皆控えめに動く。正しい選択だろう。妻クレオを演じるダイアン・レインは言葉が少ない中にどこまでも夫と生きていく覚悟を感じさせる佇まいだし(家族がバラバラにならないのは彼女のおかげだ)、娘役のエル・ファニングの瑞々しさは父トランボの時に傲慢な態度と切実なせめぎ合いを見せる。赤狩りを象徴するヘッダ・ホッパーなんてもっと飾り立てられるだろうに、ヘレン・ミレンは時代に溶け込んでさすがの妙演。ケッサクなのはB級映画会社社長役のジョン・グッドマンで、自分の利益優先を極め、かつギラギラと頼もしく輝いている。

 トランボは偽名を使って復活を目指す。ここにクレジットというものに対する映画人の姿勢が見えるのが面白い。B級映画を量産する中でも芸術作を成功に導き、オスカーまで獲っていたトランボ。ハリウッドはトランボを認め、遂に「ダルトン・トランボ」のクレジットを取り戻す。名前にこだわっていないように見えたトランボが自分の名前を確認し涙を浮かべる、その意味。胸に残るワンショットだ。





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