マッド・ドライヴ

マッド・ドライヴ “Kill Your Friends”

監督:オーウェン・ハリス

出演:ニコラス・ホルト、トム・ライリー、ジョージア・キング、
   クレイグ・ロバーツ、ジム・ピドック、ジョセフ・マウル、
   エド・スクライン、エド・ホッグ、ジェームズ・コーデン、
   ロザンナ・アークェット、モーリッツ・ブライブトロイ

評価:★★




 ニコラス・ホルト演じる主人公は、とあるレコード会社でA&Rという職業に就いている。A&Rは「Artist and Repertoire」の略で、歌手やバンドの発掘や契約、そして育成が主な仕事だ。音楽を売ることを仕事にしているシーンにおいて、極めて重要なポジションと言って良い。『マッド・ドライヴ』はA&Rの業務内容にまつわる苦悩を描き出し…はしない。そこに身を置く主人公の狂った精神世界を浮上させることに専念する。

 関連作を挙げるなら、だから「アメリカン・サイコ」(00年)になるだろうか。音楽という名の芸術に囲まれる…なんて書くと華やかだけれど、ドラッグやアルコールが乱れる中、ヒット曲を出さなければ首に繋がるという極度のプレッシャーを抱えているという実態を暴き出し、それゆえ精神を崩壊させていく様を見つめる。狙いはその皮肉な味とブラックな笑いに定められる。

 ホルトは美しい顔を歪めることを厭うことなく、主人公の闇に果敢に飛び込む。観客に語り掛ける余裕を見せ、同僚の前ではクールを装い、アーティスト相手には「大物」を演じる度胸を見せる一方で、実は高層ビルの屋上で綱渡りでもしているかのようなぎりぎりの精神状態で生きている。その危うさを毛穴から放出させる。不安や恐怖、焦りや怒り…負の要素を内に溜め込みのた打ち回る様、なかなか巧い。

 けれど物語は、主人公の栄枯盛衰を辿ることに終始して終わる。せっかく殺人事件が起こっても音楽業界には深く絡まず、新しい上司が登場しても主人公の状況が変わるわけではない。野心家の秘書、作曲家になりたい刑事、綺麗でも歌えないガールズグループ…彼らは主人公の頭を悩ませ、それで終わる。アイロニーを効かせられない物語は、単なる業界への悪口大会と化す。

 「一寸先は闇」の業界にもっと妖気が絡んで欲しい。自分以外の誰かを出し抜こうとする者たちで構成されたレコード会社の面々を揃えながら、一線を超えるホルト以外は案外真っ当で、そうすると主人公の闇が音楽業界とは無関係のところにハマってしまうではないか。泥酔した先輩の顔に小便を吹っかけて平気な顔をしている主人公、ひょっとして問題はその生い立ちにあったのではないかと勘ぐってしまう。

 クライマックス、絶体絶命の主人公がいかにして事態を切り抜けるか、ここはもっと盛り上げられたのではないか。ヒットを出してなんぼの世界。屑だとダストボックスに投げ入れたものの中に幸運が潜んでいたという弱い流れに乗っかるならば、取り返しのつかないことをしてしまった主人公が見せる一発逆転のウルトラCは、もっと唖然とするバカバカしさがあるべきだ。主人公をモンスターに仕切れなかったところに、限界を感じる。何ならTVシリーズ「Empire 成功の代償」(15年~)を参考にしても良い。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ