あるふたりの情事、28の部屋

あるふたりの情事、28の部屋 “28 Hotel Rooms”

監督:マット・ロス

出演:クリス・メッシーナ、マリン・アイルランド

評価:★★★




 男はニューヨーク在住の新進作家。女はシアトル在住の計理士。とあるホテルのレストラン、男によるナンパをきっかけに、ふたりは互いを求め合うようになる。男には恋人がいて、女には夫がいる。つまり彼らの関係は不倫だ。『あるふたりの情事、28の部屋』はどこにでも転がっていて、もはや珍しくも何ともない関係を綴る。

 それならばとマット・ロスは演出に凝る。メインキャストはふたりだけ。舞台はいつもホテルの一室。そこで起こることしか描かず、その関係の変遷を見つめるのだ。28とはふたりが逢瀬を重ねるホテルの部屋数だ。つまり関係は結構長いこと続く。それだけ相性が良いのだろう。

 背景も人間も変わらないから画面が平坦になる。それを察知したロスはあの手この手で画面に抑揚をつける。部屋の中でもベッドの上だけで話を転がすことはしないし、照明の加減を調節したり、角度やズームアップにこだわったり、シーツやルームサーヴィス等を小道具に使ったり…。まあ、どれだけ凝っても、行き着く先に幸せが見えないのは仕方がないか。

 ロスが描きたかったのは夢と現実の境界ではないか。ふたりはホテルの部屋、互いを求め合うことだけで生きている実感を得る。孤独な人生。満たされない毎日。物質的なものだけでは、寂しさに対処できない。そんな彼らにとってホテルは夢の場所だ。けれど、夢は結局夢でしかなく、そこにあるのは本物の生の実感なんかではない。その突き放した感じが終始つきまとうゆえ、不倫劇に苦味が出る。

 夢の世界に現実的な話が入り込むと、途端にふたりの関係がぎすぎすするのが可笑しい。著作の失敗。金の問題。メールにまつわる不満。子どもの誕生。彼らの部屋で現実は敵だ。都会で彷徨う魂は現実に足を掴まれると、途端に余裕がなくなってしまう。男と女はそれに気づいているのかいないのか。愚かな行為でも、彼がそこに欲するものは切実で、それに説得力がある。

 この物語に、所謂大スターが出てこなかったのは正解だ。クリス・メッシーナもマリン・アイルランドもどこにでもいそうな容姿の分、掛け合いや息遣いに生々しさが出た。絞られていない裸もリアルだ。多分、アドリブも多かったのではないか。素の彼らが役柄に投影されたことで、絵空事の世界にはならなかった。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ