教授のおかしな妄想殺人

教授のおかしな妄想殺人 “Irrational Man”

監督:ウッディ・アレン

出演:ホアキン・フェニックス、エマ・ストーン、
   パーカー・ポージー、ジェイミー・ブラックリー

評価:★★★




 ふと思い出したのは「ザ・マスター」(12年。ポール・トーマス・アンダーソン監督)のホアキン・フェニックスだ。心に隠し込んだ怪物性を解き放つあの佇まいが、未だに頭から離れない。ひょっとしてウッディ・アレンは監督しながら、フェニックスの怪物性を感じ取っていたのではないか。

 『教授のおかしな妄想殺人』のフェニックスは哲学の大学教授だ。ただし、彼は人生で哲学の迷路に迷い込み、何のために生きているのか、定かではない。ニューポートへやって来たとき、フェニックスは間違いなく無気力状態にある。アレンはフェニックスに狙いを定め、その観察を始める。送り込まれるのは、彼に心酔するエマ・ストーンだ。

 フェニックスとストーンが出会い、あぁ、それでフェニックスは息を吹き返すのか。…なんて浅はかな展開をアレンは吹き飛ばす。フェニックスはとあるダイナーで悪徳判事の存在を耳にし、自分には全く関係のない彼を殺害する計画を立てることで、自分を取り戻していくのだ。フェニックスがこの変化をでっぷりした外観に絶妙に滲ませる。

 アレン映画にしては都会の匂いが希薄で、代わりに緑と風を感じる爽やかなニューポート。フェニックスは陰鬱な自分を消し去り、代わりに陽気さを獲得する。それなのにフェニックスは、あぁ、これまでよりもずっとどす黒い影を背負いこむ。このあたりはフェニックスの巧さがよく分かる。明るくなればなるほど、生気を感じさせればさせるほど、狂気が膨らむ。しかも、それが可笑しい。アレンのユーモアとの相性が良いらしい。「魂の喪失者」とは、こんな感じか。

 ストーンもフェニックスに近づくだけではない。フェニックスとは逆にニューポートに無理なく溶け込んだストーンは、フェニックスと触れることで人生の哲学性を身を持って学んでいく。奇怪なフェニックスと対照をなす存在として気持ち良い。注目はカジュアルなファッション。淡い色のシンプルな服が似合うこと。ボーダーや刺繍といった単純なモチーフが加えられるだけで、違う風を吹かせるあたり、このネコ目女優やるな、と思わせる。

 後半、いよいよ起こった事件が解決されていくあたりは緩くもあり、それが可笑しくもあり。とぼけたアレンのユーモアがご都合主義をシラッと寛容へと誘い込む。まあ、謎解きが目的の映画ではないからのんびりと見ていられる。フェニックスの怪物性が愛しくも感じられるところが、アレンらしい。





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