クライム・ヒート

クライム・ヒート “The Drop”

監督:ミヒャエル・R・ロスカム

出演:トム・ハーディ、ノオミ・ラパス、ジェームズ・ガンドルフィーニ、
   マティアス・スーナールツ、ジョン・オーティス、エリザベス・ロドリゲス、
   マイケル・アロノフ、モーガン・スペクター、マイケル・エスパー、
   ジェームズ・フレッシュヴィル、トビアス・シーガル、アン・ダウド

評価:★★★




 マフィアの裏金を預かる闇銀行という表情を持つ、ブルックリンのバーを中心に物語が展開する。そこに強盗が入り、マフィアの5,000ドルを奪う事件が発生。同じ頃、歳の離れた従兄と共にバーを営む男が傷ついた子犬を拾う。きな臭い匂いが濃くなる。そう、『クライム・ヒート』は気の抜けた邦題同様、プロットに目新しいところはない。

 しかし、面白い。ひとつは現代フィルムノワールとして機能しているからだ。出てくる者たちは皆、癖があり、裏の顔を持っていることが明白。主人公はマフィアに金を取り戻すよう命じられ、警察にも目をつけられ、謎の男にもつきまとわれる。影を背負う、いかにも幸薄そうなウエイトレスとも親しくなる。その上、演じるのはトム・ハーディだ。

 ハーディはナイフのように鋭い演技を見せる俳優だ。ところが、ここではその鋭利さを抑え込む。窮地に陥ってもパニックになることはなく、冷静に事態を見極め、淡々とやるべきことを処理していく。ゴミ箱から片腕が見つかったときの反応を見よ。動じることは一切なく、まるで食用肉を扱うようにそれを最適な方法で捌いていく。その佇まいが寂しい風景に美しく溶け込む。

 ハーディに陽の要素はほとんどない。断然影が似合う。ブルックリンの裏通りを静かに行き来するその姿は陰影に富むし、どこかユーモアも感じさせる。子犬を可愛がるからというわけではないけれど、それこそ捨てられた子犬のようにも見える。目を合わせられないほど女慣れしていない感じも良い。ただし、それだけでは物足りなく感じられるだろう。ハーディという俳優を分かっている作り手は、孤独と密着したその危うさを見逃さない。

 スーパーボウル当日が、新たにマフィアの仕事を請け負う日に設定される。この日に起こる出来事に向かい、静かに導火線上の火が動いていく。寂しい者同士惹かれ合うハーディとノオミ・ラパス。ある思惑を抱えたジェームズ・ガンドルフィーニ。欲望を隠さないマティアス・スーナールツ。ある事実が明らかになり、物語を別の角度から輝かせる脚本が上手い。

 そう、終幕はそれまで抑え込んできたハーディの危うさが解放される舞台でもある。成功者は一握り。多くが毎日の暮らしにもがくブルックリン。犯罪が傍らにあるそこで生き抜くためには、おとなしく傍観者であり続けることすら叶わない。その翳りが哀愁を撫で、ハーディの佇まいを一層魅力的に見せる。周辺人物もまた、誰を信じるか見極めることを強いられる。傷ついた子犬に自分を見ていたに違いないハーディのラストカットが目に焼きつく。





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