アノマリサ

アノマリサ “Anomalisa”

監督:チャーリー・カウフマン、デューク・ジョンソン

声の出演:デヴィッド・シューリス、ジェニファー・ジェイソン・リー、
   トム・ヌーナン

評価:★★★




 何しろ映画界で衝撃的な初登場をキメたのがスパイク・ジョーンズ監督と組んだ「マルコヴィッチの穴」(99年)の脚本なのだ。チャーリー・カウフマンが創造する世界は、いつだってヘンテコな魅力が横溢する。アニメーションでも変わらない。デューク・ジョンソンと共同監督した『アノマリサ』には風変わりで哲学的な楽しさが詰まっている。

 画はストップモーションの作法により作られたとのこと。中でもクレイ・アニメーションに似た動きが取り入れられる。別に可愛らしさなんて狙っていないカウフマンは、ここに無気力に生きる中年男の哀しみを封じ込める。僅かに感じさせる温もりが、男のただひとつの希望であるかのように。なお、男の声を充てるのはデヴィッド・シューリス。しかし、外見はケヴィン・クラインに似ている。

 カスタマーサーヴィスのエキスパートとして知られる妻子持ちの主人公マイケルが講演先のシンシナティで理想の女に出会うという物語は、これだけだと実写でも描写できそうな気配あり。しかし、シュールでシヴィアなそのストーリーを追いかけていくと、アニメーションがベストだと気づかされる。裕福で名声はあっても何の刺激もない毎日を送る彼は、誰も彼も皆同じ顔に見え、また、同じ声に聞こえるのだ。つまりその世界は同じ顔・同じ顔の博覧会状態。

 前半は男の憂鬱の世界が念入りに描写される。飛行機でもホテルでも街中でも憂鬱に支配される主人公。もはや全てを諦めたかのような匂いが充満する。彼は今という時代のメタファーだ。手に入れようと思えば何でも手に入る時代。便利であることは間違いないものの、人との関係は希薄になるばかり。こんな時代ではそれに自分を合わせていく他ない。

 …と憂鬱が画面の隅の隅まで行き渡ろうとしたところで、出会うのがリサという女性で、どういうわけだかマイケルには彼女だけは顔も声も識別できる。ふたりは当然惹かれ合う。地味でスタイルも良くない彼女は、自分に自信が持てない存在だ。憂鬱が晴れていく。ホテルの部屋で繰り広げられるセックスシーンには、アニメーションなのに息を呑む。それこそ体温を感じてしまう生々しさ。遂に分かり合える人と出会えた喜び。でも、どこか薄ら寒くもあるのは何故。

 そう、この薄ら寒さがカウフマンのカウフマンたる所以だ。このままハッピーエンドに雪崩れ込むのかと思いきや、何ともまあ現実的な展開が待ち構える。生きていくというのはどういうことなのか、再び疑問を投げ掛け、さらに人間は自分に都合の良いように人を受け入れる・或いは人を選ぶ生き物だという現実を容赦なく突きつける。希望と絶望の同居。カウフマンの人間観が面白い。





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