ヘイル、シーザー!

ヘイル、シーザー! “Hail, Caesar!”

監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

出演:ジョシュ・ブローリン、ジョージ・クルーニー、
   オールデン・エアエンライク、レイフ・ファインズ、ジョナ・ヒル、
   スカーレット・ヨハンソン、フランシス・マクドーマンド、
   ティルダ・スウィントン、チャニング・テイタム、
   アリソン・ピル、クリストファー・ランバート、ジャック・ヒューストン

評価:★★★




 映画スターが何者かに誘拐されるという犯罪ストーリーでコーエン兄弟が試みるのは、バカとハリウッド黄金期へのオマージュとスターのアンサンブルの融合だ。「ファーゴ」(96年)程にブラックなスパイスは効かず、「ノーカントリー」(07年)のようにコクのある悪夢は広がらなくても、さすがはコーエン兄弟、ちゃんと仕上げてくる。

 バカが分かりやすい。ジョージ・クルーニーはずっとマヌケ面のままだし、オールデン・エアエンライクの惚けた感じは笑いを堪えるのが難しい。事件解決に奔走するジョシュ・ブローリンも一向に気の毒に見えず、事件に振り回されるしかめっ面に可笑しみを漂わせる。コーエン兄弟特有のバカ要素が、いつもより強調されている感。

 その分「陰謀」が温くなった印象はある。事件の背後に共産主義が絡み、後にハリウッドを揺るがせる赤狩りの影がちらつく。単純に思想をジャッジしないスタンスこそホッとするものの、誘拐とそれぞれの思惑まで表層的な描写に落ち着いてしまった。コーエン兄弟ならばもっと捻ることもできたのではないか。

 …とは言え、バカに絡むオマージュとスター・アンサンブルは冴え渡る。次から次へと出てくる撮影風景がいちいち見もの。ゴージャスな美術と衣装に彩られた舞台装置に、スターがスターであった時代の輝きが封じ込められる。もちろん当時の(今から見れば)古臭い(懐かしいと言い換えることも可能)匂いも再現。スタジオシステムが生きていた時代に、名作へのウインクを散りばめる。

 舞台が用意されているから、当然スターは輝く。次々顔を見せる今のハリウッドを代表するスターたちは皆、さぞかし撮影が楽しかっただろう。なぜなら登場場面はいずれも、そのまま彼らの見せ場になっているのだ。コーエン兄弟は見せ場を繋げながら物語ることに挑む。アンサンブルに厚みを出す、今回の回答だ。スカーレット・ヨハンソンはどこまでも美しく(しかし性格はよろしくない)、チャニング・テイタムは愛嬌たっぷり歌い踊る(でもどこか胡散臭い)。

 しかし、何と言っても最大の収穫は、西部劇のスターを演じるエアエンライクだ。訛りがきつく、演技も大根まっしぐらな青年スターを憎めないチャームを全開にして演じる。目周りはヴィンス・ヴォーンそっくりだけれど、決してコピーには見えない。映画監督役のレイフ・ファインズと見せる抱腹絶倒の掛け合いを始め、出てくる度に暢気でフレッシュな風を吹かせるのにも注目だ。

 『ヘイル、シーザー!』はまあ、コーエン兄弟のフィルモグラフィの中で重要な作品かと言うと、全然そんなもんじゃない。後に何かが残るかと言うと、綺麗さっぱり何も残らない。でもコーエン兄弟は最初からそれを狙ったのではないか。一流の技が(良い意味で)くだらないことに捧げられることほど、贅沢はないのだ。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ