追憶の森

追憶の森 “The Sea of Trees”

監督:ガス・ヴァン・サント

出演:マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ

評価:★★




 マシュー・マコノヒー演じる主人公は死に場所として青木ヶ原を選ぶ。所謂樹海だ。しかし、アメリカ人の彼が何故わざわざ日本まで来るのか。そうしたらGoogleで「the perfect place to die」と検索していちばん上に出てきたゆえだから驚く。実際に検索してみると、確かに青木ヶ原がトップで紹介される。まさか樹海が自殺スポットとして世界的にも有名だったとは…。

 検索理由以外に樹海が主人公に選ばれた理由は見当たらないものの、ガス・ヴァン・サント監督が富士山の北西に広がる緑の海にスピリチュアルなものを感じ取ったのは間違いない。もしかしたらヴァン・サントは主人公が導かれて樹海にやって来たと考えているのか。確かに木漏れ日射す木々の間には何かが息を潜めていそうな気配がある。

 けれどもしかしたらこれは、日本人特有の嗅覚が働いているせいかもしれない。森に神秘や畏怖を感じ、近づいてはならないと己を戒めつつ、それでもなぜか惹かれてしまう場所。それは日本の長い歴史の中で育てられた霊魂を信じる心に補強されたものでははないか。日本人はヴァン・サント以上に樹海に何かを感じる。逆に言うと、日本人以外が主人公が迷い込む森に何かを感じ取るのは難しいと察する。

 ヴァン・サントは樹海にその死生観を解き放つものの、むしろそこからの再生に興味を示す。渡辺謙扮する傷だらけの男と遭遇したことをきっかけに、マコノヒーはいつしか絶望と希望の割合を逆転させていく。華美な装飾が拒否されるのが好ましい。ヴァン・サントはあくまで樹海の風や匂いにこだわり、それが男の傷ついた心を撫でるのに心を砕く。

 マコノヒーが自殺を決意する経緯がフラッシュバックで描かれるのは物語にそぐわない。最初は幸せだった結婚生活。それがいつしか擦れ違い、互いを思い合うことが難しくなり、そんなときに妻に病気が発覚し、そして…。絶望の底には強烈な後悔がある。妻にいちばん近い存在だったはずの自分なのに、好きな色や季節も知らない。ナオミ・ワッツを妻役に置いてそれを見せるものの、精霊が見える樹海に挟まれると、緑に染まった画面に較べると妙にくどい。

 終幕に明らかになる事実は、人によってはとんでもオチに見える可能性すらあるだろう。それは渡辺の存在にこだわり過ぎてしまうところから来るのではないか。ヴァン・サントすら伏線を回収して答えを提示することに熱心になる。余計な語りではないか。からくりが見えることでチープに感じられるくらいだ。富士山に見下ろされたその海に説明は不要なのだ。





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