さざなみ

さざなみ “45 Years”

監督:アンドリュー・ヘイ

出演:シャーロット・ランプリング、トム・コートネイ、
   ジェラルディン・ジェームズ、ドリー・ウェルズ、デヴィッド・シブリー、
   サム・アレクサンダー、リチャード・カニンガム、
   ハンナ・チャーマーズ、ルーファス・ライト

評価:★★★




 崩壊は結婚45周年パーティの数日前、スイスから届いた一通の手紙から始まる。それは夫が妻に出会う少し前に死んだ、夫の元恋人の遺体が氷河の中から見つかったという知らせだ。妻は言いようのない不安感に包まれる。

 『さざなみ』は一見不思議な話だ。妻が畏れを抱く相手は、既に死んでいるのだ。それも50年も前にだ。夫とは45年にも及ぶ、決して平坦ではなかったに違いない結婚生活を乗り越えてきた。何を今更たじろぐ必要があるのか。アンドリュー・ヘイはそれが安易な考えであることを証明する。冷静と冷徹を忘れることなく。

 結局大抵の場合、物事というものは、量より質だ。男女の関係とて例外ではない。ヘイはその身も蓋もない事実を生け捕る。夫が本当のところどう考えているのか分からない態度を掬い上げながら。妻がそれを敏感に察知する様を凝視しながら。45年が悲鳴を上げる様を見逃さない。妻はもしかしたら人生の大半を捧げた45年が虚飾に満ちたそれではないかという疑念から離れられなくなる。

 妻の感情をつまらない嫉妬だと片づけるのは容易い。けれどヘイはむしろ、その怪物的側面を注視する。一度心に入り込んだそれは、夫の些細な言動を養分に成長を続ける(夫の反応はやや漫画的)。一度成長が始まると、それが止まらない。時間だ。45年という妻の武器に見えたものが、ここでは嫉妬の拡大を助けていく。

 シャーロット・ランプリングが怪物と闘う。僅か前まで理想を手に入れたことを確信した余生だったのが、今では内に湧き上がる感情を抑え込むことに精一杯だ。嫉妬は憎しみに化けることすらある。ランプリングがピンと伸びた背筋と笑顔の裏で怪物と闘う様を生々しく見せる。日常に飛び出したそれが、心を刻一刻と蝕んでいく。そして呟く。「匂いが家を取り巻いている」。

 クライマックスとなる結婚45年パーティが恐ろしいの何の。夫が感極まって涙を見せる一方で、妻は喜びを取り繕う。夫に愛されていることを確信する自分を演じ続ける様、その可笑しさ、いじらしさ、恐ろしさ。45年前の結婚式で踊ったダンスを再び一緒に踊るふたりが醸し出す異様な気配。ヘイは全てを丸く収める気などさらさらない。斯くして、ランプリングが最後に見せるその表情!彼女が向き合うべきは夫ではない。他の誰でもない。実は自分なのだ。





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