レヴェナント:蘇えりし者

レヴェナント:蘇えりし者 “The Revenant”

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン、
   ウィル・ポールター、フォレスト・グッドラッグ、ドウェイン・ハワード、
   アーサー・レッドクラウド、クレイス・ドーヴ、ポール・アンダーソン、
   ルーカス・ハース、ブレンダン・フレッチャー

評価:★★★




 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥとエマニュエル・ルベツキは「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(14年)ではブロードウェイの裏側を舞台に、全編一発撮りしたかのような長回しを駆使、凝りに凝った映像を作り上げた。それが『レヴェナント:蘇えりし者』ではどうだ。西部開拓時代、雪景色の山奥に、自然光だからこその陰影を湛えながら、天と地の間にある万物を捉えてみせる。

 雪が敷き詰められた林を縦横無尽に動き回る冒頭のシークエンスから瞬く間に引き込まれる。ここでの人間は自然界の一部として存在する。物語を進めるのは人間ではあるものの、その彼らは自然の上でちっぽけな思いを巡らせているに過ぎない。たとえ時代がどれだけ変わっても、人間は自然の上を行くことはできない。それを強く痛感させられる画が並ぶ。自然と人間の共生はひとつのテーマだ。

 レオナルド・ディカプリオ演じる主人公ヒュー・グラスを突き動かすものは何か。極寒の地で息子を目の前で殺され、瀕死の状態で置き去りにされた男の心と身体の旅は、一見復讐を燃料にしているようだ。けれど、イニャリトゥがそんな単純な箱に想いを閉じ込めて満足するはずがない。イニャリトゥは心身共に深く引き裂かれた男を形作るものを念入りに見つめる。それを解き明かすことに全てを注いでいると言って良いくらいに。

 中盤のディカプリオはずっと大地を這っている。その姿は惨めを極める。今ここに天敵が現れた場合、物の数秒で天に召されるだろう。もはやそこには魂すら見てはいけないのではないか。愛する息子を殺された瞬間から、果てしなく広がる憎しみ。死んだ方が楽なのに、それでも渇望する命。人はまた自然の一部でしかない、小さな自分への絶望。生きることは斯くも厳しいことなのだと男の身体が軋む。様々な想いがぶつかり合い、けれど最終的に残るのは憎しみだという事実。野蛮の正体を突きつける。

 谷底に落ちた主人公が猛吹雪の一夜を生き残るためにやってのける荒技が忘れられない。死んだ馬の内臓を引っ張り出し、皮だけとなった馬の中に潜り込むのだ。憎しみに支配された肉体が、もはや憎き相手の息の根を止めるための箱に成り替わろうとしている。ディカプリオはグラスを肉体にも精神的にも追い込むことを恐れない。そして、その空虚なる肉体の意味を問い掛け続ける。

 ここには愛の深さを謳ったり生命力を讃えたり困難を乗り越える力を掲げるような生易しさは皆無だ。主人公がそんなものを放出し続けたなら、陳腐なメロドラマに堕ちていたことだろう(仰々しい音楽だけは全く乗れず。自然の音だけですべき題材だ)。それでも男は最後に見えないはずのものを見る。そして我々は男の目を初めて真正面から目撃する。金縛りにあったような緊張が走る。





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