グランドフィナーレ

グランドフィナーレ “Youth”

監督:パオロ・ソレンティーノ

出演:マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、
   ポール・ダノ、ジェーン・フォンダ

評価:★★★★




 そのホテルはスイスの絶景の中にある。高く青い空。深い緑。清らかな水。設備もスタッフも充実、至れり尽くせり。もちろん宿泊客は金持ち揃い。名声も持ち合わせている。全く持って嫌味な舞台設定で、でもどこか心にまとわりつく虚しい匂いがある。

 そう、『グランドフィナーレ』は人生の深淵の気配を漂わせる。マイケル・ケイン演じる引退同然の音楽家を中心に、映画監督や俳優、登山家、結婚に敗れた女、元サッカー選手たちが優雅に戯れているだけに見えて、彼らの佇まいの隙間には、朽ちていく肉体と滅びゆく記憶へ縋る、人間の可笑しみや哀しみがちらつく。

 とりわけ誰しもが死に近づいていくという事実に対しての向き合い方に味がある。これは視線の問題だ。長い人生を実際に生き抜いてきた者のそれではない。今はまだ良く動く身体を持つ者の、歳を重ねることへの憧れと畏れを伴うそれなのだ。簡単に言えば、老いを描きながら、映画自体はとても若々しい。しかもそれが浮つかず、それどころか大変な説得力がある。

 映像にそれは顕著だ。単に美しい景色を切り取るだけではない。若い肉体と老体を対比させるだけではない。そこに流れる生きるエネルギーや滾る血の流れを封じ込めたような画が並ぶ。

 カメラワークの面白さは、構図のユニークさも含めて、注目すべき点だろう。音楽と編集のリズムの助けを借りて、静かな動きの中にこれ以上ない若い躍動が感じられる。アクションのない場面でも画が動いているような錯覚。時に3Dのように立体的に見えることがあるくらいだ。なるほどパオロ・ソレンティーノは映像の魔術師と呼ばれることもあるらしい。

 もちろん俳優たちのアンサンブルは素晴らしい。背景に呑まれない存在感を湛えた俳優たちが、人を喰ったユーモアを発散しながら、確かに生きることを噛み締めていく。避けられない老いや衰えが、若い画面の中に映える様。ケインやハーヴェイ・カイテルがそれを捕らえる技。さすがとしか言いようがない。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ