ルーム

ルーム “Room”

監督:レニー・エイブラハムソン

出演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョアン・アレン、
   ショーン・ブリジャース、ウィリアム・H・メイシー、マット・ゴードン、
   アマンダ・ブルジェル、ジョー・ピングー、トム・マッカムス

評価:★★★




 無実の罪により、14年もの長きに渡り監獄に閉じ込められた男がいる。巌窟王だ。彼と『ルーム』で納屋に監禁される若い母とその息子には共通点が多い。自分の意思でそこにいたわけではない。脱出の術が見つからない。希望の欠片は無残に踏み潰される。レニー・エイブラハムソン監督はしかし、むしろその違いに敏感だ。

 まず、『ルーム』組は親子だ。17歳のとき女は不意に拉致され、ルームと呼ばれる納屋に幽閉され、しかもそこで母になる。赤ん坊のときは描かれないものの、彼女がルームにある生活道具とテレビを利用し、傷つけないよう配慮しながら息子に知識を叩き込んだことは容易に想像できる。そしてそれが希望になる。もちろん愛する者の存在は人を強くする。

 希望がいよいよ大きくなったところで始まる脱出劇は、手に汗握らずにはいられない。まだ片手で数えられる年齢の息子に、危険を百も承知で全てを託す。小さな身体が知恵を絞って懸命に動く。命というものについて考えずにはいられないアクションだ。

 そして巌窟王とのいちばんの違いは、ルームの意味にあるだろう。巌窟王にとっては忌々しく悍ましい象徴でしかない牢獄は、母と息子にとっては、ふたりきりではあったものの、確かにそこは生活の場所だった。母にとっては息子と初めて出会い、おそらく初めて真剣に「生きる」ことを考えた空間だ。息子にとっては、そこが人生の全てだ。今ある自分は丸ごと全部、ルームで出来上がった。簡単に言えば、ルームはふたりの世界だった。

 ふたりはそのルームから、テレビの中で観ていた「作り物」の世界へと足を踏み出す。それを受け入れることは簡単なことではない。テレビの世界とルームの世界の意味が完全に逆転してしまうのだから。遂に手に入れたはずの自由が、むしろふたりを苦しめる。ルームとは比べ物にならない広々とした空間を知った息子はつぶやく。「ルームのベッドで眠りたい」。

 エイブラハムソンはルームこそが母息子を成立させていた現実であることを常に意識して撮っている。母役のブリー・ラーソンも息子役のジェイコブ・トレンブレイも、本来の世界に戻ったとき、常にルームの記憶を風景の向こうに観ている。そしてそれだからこそ、それを振り払い、新しい人生を組み立てる意義が際立つ。本物が偽物になり、偽物が本物になり、それゆえ本当の自分が見えなくなる恐怖とそこからの再生が立体的に迫る。

 後半、やや分析的になるエイブラハムの演出の欠点を補うのがラーソンとトレンブレイの演技だ。ふたりが本物の親子に見えなければ、この物語は作り物色が極めて強いものになっていたはずだ。それを切り抜けられたのはラーソンが見せる深い愛情とトレンブレイが感じさせる生物の本能的な適応能力があればこそだ。とりわけトレンブレイの穢れを知らない身体に潜む強さは見応えがある。





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