スロウ・ウェスト

スロウ・ウェスト “Slow West”

監督:ジョン・マクリーン

出演:コディ・スミット=マクフィー、マイケル・ファスベンダー、
   ベン・メンデルソーン、カレン・ピストリアス、ロリー・マッキャン、
   エドウィン・ライト、アンドリュー・ロバート

評価:★★★




 通常西部劇の世界は勧善懲悪がはっきりしているものだ。善玉が悪玉を懲らしめる構図が愛される。『スロウ・ウェスト』も出てくる人物の善悪がはっきりしている。ただし、それが翳りを帯びる。理由は明白だ。西部開拓時代は生存競争が激しい時代でもあり、それが強く意識されるからだ。

 事情がありアメリカへ逃げてしまった愛する女を捜すスコットランドの青年が、賞金稼ぎの男と共に、彼女の行方を追う旅路。次々出会う人々は皆、裏がある。未来に可能性は見えても、まだそれが具現化されていない土地。そこでは良識を振りかざすだけでは生きていけない。それを強く知る賞金稼ぎでさえも、ふとした隙に足をすくわれる。青年は賞金稼ぎとの旅でそれを身を以って知る。

 けれど、青年に同情を寄せるようなことはなされない。それこそが本来の人間の姿だからだ。余計な装飾が削ぎ落とされた物語を眺めていると、人は母なる大地が産み落とした生物の一種であり、特別なところなど何もないのだと思い知らされる。そしてその先には命というものの儚さが見える。今ある命が次の瞬間、跡形もなく消えてしまっても不思議ではないのだと。

 それを強く映し出すのが、西部劇の醍醐味と言えばそう、雄大な自然であることは言うまでもない。深い森。砂埃舞う砂漠。そびえ立つ山々。突然の雨。広大な大地をちっぽけな人間と馬がとぼとぼと歩くショットなど、定番だと承知しつつ、それでも完全に魅せられる。その綺麗さを、時に絵画ではないかと疑いたくなるほどの絶景。命が揺らめく様が詩情豊かに浮かび上がる。どうやら撮影はニュージーランドでなされたらしい。お見事。

 この美しい世界に放り込まれるおかしみもまた、愛さずにはいられない。悪名を轟かせたい若者にまつわる逸話。びしょ濡れの衣服を乾かすたために二頭の馬の間にロープを渡して衣服をかけて歩く図。意表を突く結末もまた、不条理などという言葉では片づけたくない一抹のおかしみが漂う。なぜ語り手が青年ではなく賞金稼ぎなのかも腑に落ちる。死んでいった者たちの魂が大地の養分になったかのような落ちではないか。

 配役も適材適所。中でも賞金稼ぎ役のマイケル・ファスベンダーが滅法格好良い。シリアスな役柄で深刻さを追求していた感のあるファスベンダーが、ここでは単純に西部の住人に成り切っている。ハットやブーツ、ガンベルトやバックルといったウエスタンファッションが似合うの何の。煙草や酒、馬と並ぶと絵になる。くたびれた佇まいの中にしたたかさと茶目っ気を同居させている印象だ。西部劇の楽しみのひとつが役者の華にあることを思い出す。





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