Mr.ホームズ 名探偵最後の事件

Mr.ホームズ 名探偵最後の事件 “Mr. Holmes”

監督:ビル・コンドン

出演:イアン・マッケラン、ローラ・リニー、マイロ・パーカー、真田広之、
   ハティ・モラハン、パトリック・ケネディ、ニコラス・ロウ、
   ロジャー・アラム、フィル・デイヴィス、フランシス・デ・ラ・トゥーア

評価:★★★




 世界一有名な探偵であることの宿命か、シャーロック・ホームズはアーサー・コナン・ドイルの手を離れて、変化球ヴァージョンがいくつも作られている。ホームズが現代シーンに現れるのは当たり前、ジョン・ワトソン博士が女に変身したかと思えば、場合によってはホームズとワトソンの間に妙な空気が流される。ドイルはこの事態をどう思っているのだろう。

 『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』はその点、オリジナルを愛する人々も(きっとドイルも)受け入れやすい作りではないか。93歳のジイサンになったホームズを主人公に、30数年前に彼を引退に追い込んだ事件の謎の解明が目指される。原作ファンが納得できるオリジナルへの敬意を至るところに散りばめながら。ホームズが老いたら確かにこんな感じだろう。そう思わせる、節度あるビル・コンドンの演出。

 何しろホームズ役はイアン・マッケランだ。所作のいちいちが美しいったらない。作られた自身のイメージはワトソンの創作だと呟きながら、けれどその品のある佇まいは隠せない。60代のホームズと90代のホームズの差を的確に出しながら、マッケランが解けない謎に苦悩する様を優雅さと物寂しさをまとって描き出す。

 しかもジイサンホームズは、田園や海が近くに広がる田舎で養蜂をしながら暮らしているという設定だ。すっかり老いて身体つきはよぼよぼ、杖が必需品だし、きびきびとは動けない。ところがこのホームズの老いた身体が緑の背景に柔らかに溶ける。質素な家で机に向かう様。椅子にもたれる様。蜂の世話を黙々とこなす様。あぁ、それだけが何と美しい。

 美しい。けれど、老いる厳しさはもちろん忘れられない。身体の自由が利かなくなることもさることながら、思考や記憶という何物にも代えられない財産が奪われていくことにまつわる寂しさがしみじみ沁みる。家政婦の息子であるロジャー少年の登場が意味を持つ。彼の躍動感がジイサンホームズと鮮烈な対比を作る。老いた命と若い命が互いを響かせる。

 少しずつ記憶を辿りながら語られるゆえ、過去の事件がなかなか見えてこないじれったさはあれど、それでも遂にホームズが解き明かす謎には穏やかな余韻がある。表面的な謎の解体だけで見えない人間の心の宇宙が広がる。そしてホームズはその存在に対峙することで、自分の中にも広がる宇宙を見る。マッケランの慈しみ溢れる眼差しが目に焼きつく。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ