リリーのすべて

リリーのすべて “The Danish Girl”

監督:トム・フーパー

出演:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィキャンデル、ベン・ウィショー、
   マティアス・スーナールツ、アンバー・ハード、セバスチャン・コッホ

評価:★★★




 なるほどエディ・レッドメインはリリー役に適役かもしれない。風景画家であるアイナー・ヴェイナーは世界で初めて性転換手術を受けた人物だという。中性的な匂いをまとうレッドメインは、化粧やドレスアップにも無理なく馴染みそうだ。実際アイナーからリリーとなったレッドメインはそこいらの女より綺麗だ。いや、女の格好をすると首や背中に男を感じてしまうのだけど。

 トム・フーパーはリリーを見世物にしない。性転換という当時なら気が遠くなりそうなことに挑む人間を、自分らしくありたいとだけ願う、誰よりも自分に正直でありたかった者として見つめる。だからここには彼を物珍し気に眺める視線や心ない中傷の言葉は見当たらない。

 代わりにフーパーはアイナーがリリーへと変わっていく過程を丁寧に描く。どこか違和感を感じながらも心の奥底に仕舞い込んでいた何かを、そんな自分に誰よりも戸惑いながら、露にしていくリリー。フーパーはその気づきを見落とさない。レッドメインも細やかな態度を崩さない。あくまでこれは己の解放だ。意思的に変化を求めたわけではないのがポイントだ。

 リリーの完成度がどんどん高くなっていくのは見ものひとつだろう。自分への畏れを感じていたであろうリリーの、全ての自分を肯定することで手に入れる本物の輝き。メイクや衣装もリリーに溶け込んでいく。ささやかなるカタルシスもある。ただし、そこはエゴも見える。自分を求めるがあまり、時にいちばん近くにいる大切な人を傷つけることがあることが見逃されない。

 そう、アイナーの妻ゲルダの存在だ。リリーという女の誕生は、アイナーが本当の自分を獲得することであると同時に、ゲルダが愛する夫を失うということだ。誰よりもアイナーを思い、リリーを受け入れるゲルダは、もしかしたら夫よりも深い葛藤を抱えている。アリシア・ヴィキャンデルの潤んだ瞳の奥にある光と哀しみが沁みる。リリーの誕生はゲルダの存在なくしてはあり得なかった。そう思わせる深い愛情が感じられる。

 女になることを願う夫とその彼を信じる妻、『リリーのすべて』はふたりの正真正銘のラヴストーリーだ。ふたりの傍には魅力的な男が少なくない。けれどフーパーは、彼らの間に流れる愛情ほど確かなものはなかったと考察する。互いを思い合うからこそ傷つけたり自己嫌悪の水に嵌ったりするふたり。何よりも説得力のある希望としてふたりの愛情が存在する。何物にも代え難い崇高な魂が寄り添い合う。





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