ワイルド・ギャンブル

ワイルド・ギャンブル “Mississippi Grind”

監督:アンナ・ボーデン、ライアン・フレック

出演:ベン・メンデルソーン、ライアン・レイノルズ、シエナ・ミラー、
   アナリー・ティプトン、アルフレ・ウッダード

評価:★★★




 主人公はギャンブル依存症だ。不動産会社で稼いだ金の全てをギャンブルに投じては負け続けている。当然貧しい。借金塗れだ。その彼があるとき珍しく勝負に勝つ。彼は傍らにミューズを見つける。一緒にいれば勝ち続けられるのではないか。『ワイルド・ギャンブル』がちょいと珍しいのは、ミューズが男という点だ。別に同性愛映画ではない。

 斯くして始まるアイオワから南部に向けてのロードトリップは、寄った先でギャンブルするという、44歳と35歳のオッサンふたりの旅にしてはもうひとつの頼りないものだ。そしてそこにそこはかとなく漂う哀愁こそ、作り手の目指すものだ。南部の生温い空気に男たちの哀愁が溶けていく。勝つ負ける以外、何が起こるわけでもない。ただ、そういう人生がある。

 主人公は間違いなくろくでなしだ。けれど、ベン・メンデルソーンにかかると、そのろくでなしぶりが愛しくなる。引き際というものを知らない主人公のダメなところをジャッジすることのないまま、そういう風にしか生きられない男の空気を丁寧に伝える。しょぼくれてはいても、どこか男には生命力に似た何かが感じられる。ろくでなしの中に命を灯している。

 すると男が違った角度から見えてくる。彼は金持ちになりたいわけではないのではないか。負けることにある種の快感を感じているのではないか。負け続けることで生を確かめているのではないか。ある展開があって大金を手にした後の表情や背中は、借金塗れでいるときよりも寂しげに見える。メンデルソーンの醸し出す気配、その味わいは単純ではない。

 メンデルソーンにラッキーチャームと呼ばれるライアン・レイノルズもまた、実はそんなに大した男ではない。メンデルソーンと一緒にいることで相対的に輝いて見えるものの、その輝きは僅か一瞬に過ぎない。旅が始まってしまえば、アッという間に現実に囲まれる。レイノルズもまた、その翳りを的確に捉えている。メンデルソーンがレイノルズにこだわればこだわるほど、その色は濃くなる。

 メルデルソーンとレイノルズの関係がなかなか沁みる。表社会との関係を断ち切る勇気はないまま、それでもギャンブルに手を出してしまうふたり。彼らは互いを自分の思い通りにしようとは決してしない。互いの行動に口を出さず、その意思を尊重する。結果、悪い方向に転がっても怒らないし、指南しない。ラッキーチャームとして傍に居続けるだけ。慎ましくも確かな美が見える。





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