サウルの息子

サウルの息子 “Saul fia”

監督:ラースロー・ネメス

出演:ゲザ・レーリヒ、リヴェンテ・モルナール、ユルス・レチン、
   トッド・シャルモン、ジョーテール・シャーンドル

評価:★★★




 ゾンダーコマンドとは特殊任務部隊という意味だ。ユダヤ人の収容所で同胞の死体を処理し、遺品を集めてはナチスに渡す仕事に従事する。過酷だ。生きられる分良いなんてものではない。彼らも数カ月もすれば、処刑が待っている。『サウルの息子』の主人公サウルは、まさしくこのゾンダーコマンドに配される。

 映画は息苦しさを覚悟し、徹底的にサウルの一人称を守る。どの場面も中心にいるのはサウルだ。カメラが映すのはサウルが見たものか、或いはサウル自身を捉えたものに限られる。サウル自身も全身は映らない。上半身中心、多くは顔のクローズアップだ。手すらほとんど映らない。

 炙り出される圧倒的臨場感。ギリギリの精神状態。あまりにも危うい日々の時間の流れ。いつしかカメラはサウルの目そのものになる。ナチスが仕掛ける残虐行為の多くは、実は直接的にはさほど映し出されない。それはきっと、サウルが直視しない術を獲得したからだ。見たくないものはモザイクがかかったようにぼやける。

 サウルは目の前で息子が殺されるところを目撃する。そしてその遺体をユダヤ教の教義に乗っ取って埋葬することを決意する。それゆえの二日間に渡る奔走。実はゾンダーコマンドの内部では脱走計画が進んでいる。落とされる最小限の情報の中、サウルは身の危険を晒してまで埋葬にこだわる。

 仲間の命をも危険に貶める行為。作り手はそれを父の愛ゆえなどと綺麗にまとめることを拒否する。サウルは己の中にある人間という生き物の本能に突き動かされ、反射的に動いているように見える。ユダヤ人としてこの世に生を受けた男が命と引き換えになっても譲れないと覚悟を決める何かが画面を支配し始める。怪物でしかないナチスはどんな本能を働かせているのか。それに疑問を投げ掛けながら。

 いよいよ決行される脱走作戦の行く先には何があるだろう。サウルがラストで見せる笑顔を捉えた後、カメラは突然サウルから離れる。そしてある少年を追いかけ始める。残酷無慈悲な残虐性に貫かれた世界、そこに射す光を信じる。その意味を語りかけるための映画のようだ。サウルの息子はやはり光源だったのだろう。





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