キャロル

キャロル “Carol”

監督:トッド・ヘインズ

出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、サラ・ポールソン、
   ジェイク・レイシー、カイル・チャンドラー、ジョン・マガロ、
   コーリー・マイケル・スミス、ケヴィン・クローリー

評価:★★★★




 テレーズ・ベリベットは二回「天から落ちた人」(My angel, flung out of space)と呼ばれる。ではキャロル・エアードは何に例えられるだろう。存在するのかどうか定かではないけれど、何年かに一度、月夜の晩にだけ大輪を咲かせる花なんてどうか。もちろんそれは一輪しか咲かない。けれど小さくはなく、艶やかな赤をまとい、そして人を引き寄せずにはいられない香りが濃い。

 そう、キャロルは難役だ。ゴージャスを絵に描いたような華やかな容姿。高級服に負けない所作と佇まいを持ち、その態度は堂々と気持ち良い。しかし、心にはどうにもならない虚無感を抱え、それを持て余したまま、突破口を見つけられずにいる。それこそ時折、消えてしまいそうな弱さと共に。つまり彼女は美しく力強くありながら、脆く儚い。

 キャロルはケイト・ブランシェットにより命を与えられる。綺麗なセリフ回しや颯爽とした立ち居振る舞いは相変わらず、それに加えて今回のブランシェットは全身から妖気を放出する。人を魅惑する存在でありながら、己の心の空洞に気づき、けれどそれをどう埋めるべきか確信を持てない。キャロルは妖気を放ち、でもそれをコントロールできない。それゆえの危うさをブランシェットが操る。

 トッド・ヘインズはキャロルとテレーズの関係から匂いを掬い上げる。初めて顔を合わせるときの戸惑いの匂い。テレーズがキャロルの邸を訪れるときの穏やかな匂い。一転、夫が粗暴に帰ってきたときの獣の匂い。モーテルで香水をつけ合うときの愛欲の匂い。身体を合わせるときの肉の匂い。

 ヘインズはまた、体温にも敏感になる。血は通っていても、ありのままの自分を抑えてきたふたりの女が、逢瀬を重ねる度に体温を上げていく。とりわけ遂に身体の関係を持ったときの肉体の高揚は、身体の匂いが立ち上がることもあり、急激な体温の上昇をもたらす。テレーズを演じるルーニー・マーラはあまり体温を感じさせない女優だ。ところが、その彼女が生を強く感じさせるほどに身体を赤く、熱くさせていく。

 『キャロル』は女ふたりの関係が少しずつ動いていく様を捉える撮影が素晴らしい。物語を貫く緊張感は、ふたりの距離感が極めてデリケートに描き出されるところから来ている。カメラは時にキャロルの目線になり、テレーズの目線になる。またあるときはふたりを真正面から見つめ、またあるときは遠くから眺める。すぐ傍で寄り添うように見つめるときもある。ゆえにロングショットもクロースアップも少なくない。そしてそれが、ふたりの距離が今どれくらい近づいているのか、或いはどれだけ離れたかをつぶさに伝える。ラストショットのキャロルとテレーズが興奮させるのは、その距離がいよいよゼロに近くなるからだ。





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