オデッセイ

オデッセイ “The Martian”

監督:リドリー・スコット

出演:マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ、
   ジェフ・ダニエルス、マイケル・ペーニャ、ケイト・マーラ、
   ショーン・ビーン、セバスチャン・スタン、アクセル・ヘニー、
   キウェテル・イジョフォー、ベネディクト・ウォン

評価:★★★★




 火星にたったひとりで取り残される主人公のサヴァイヴァルは「キャスト・アウェイ」(00年)だ。宇宙船の内部の遊泳映像は「ゼロ・グラビティ」(13年)を思わせる。地球から固唾を呑んでミッションの成り行きを見守るNASAの姿は「アポロ13」(95年)を思い出した。『オデッセイ』は既視感を覚えるところが少なくない。それにも関わらず、実に新鮮だ。リドリー・スコットのタフな演出に似つかわしい題材だ。

 主人公を演じるマット・デイモンが魅力的だ。つくづく思う。男の価値を高める要素のひとつはサヴァイヴァル能力にある。絶体絶命のピンチに陥ったとき、あたふたするだけでは何も生まれない。デイモンは代わりに知恵を絞る。じっと目を凝らし、置かれている状況を把握し、何が最善かを確実に見抜く。それが生命力に繋がる。もっと単純にしぶとさと言い換えても良い。

 そう、デイモンがしぶとい。大抵の人間なら一週間と持たないかもしれない最悪の状況下、彼は僅かな光を見逃さない。大抵の男はここで体力勝負に出る。もちろんそれも結構なのだけど、デイモンはそれよりも科学の力を利用する。彼は植物学者なのだ。僅かな食料からジャガイモを栽培するし、水素と酸素を使って水を創り出すという離れ業もキメる。くたばってたまるかの精神が科学の分野に持ち込まれ、しぶとさが眩しく見えてくる。つまりデイモンが輝く。

 スコットはデイモンの佇まいを深刻に見つめるだけではない。そこに可笑しみを見出す。こんな状況、もう笑うしかない。苦悩の表情で固めることを放棄し、その代わりに逞しく頼もしく前進するひとりの男の姿の中に宿るユーモアを炙り出す。斯くしてデイモンの髪の毛がコントのように縮れ、場違いなディスコミュージックが流れ出し、遂に繋がった人々とのメールのやりとりも一筋縄では行かない。

 主人公が取り残された火星、彼の生存を知らぬまま地球を目指す宇宙船、打開策を練り上げる地球。スコットはこの三地点を優雅に行き来する。難解な言葉が飛び交い、現実的なやりとりがなされているのかすら分からないものの、どの地点もスピード感に溢れた画が並ぶ。これはキャストの力も大きいだろう。デイモンだけではなく、ジェシカ・チャステインやキウェテル・イジョフォーらが空間を結ぶ。孤独と絶望が傍らにある中、それを乗り越えて生き抜く力を持つ人間賛歌を呼び起こしながら。

 実のところ、クライマックスの作戦など、素人の目から見ても無謀としか言いようがない。けれどここには、そのはったりに乗ってやろうと思わせる愛敬と気合いがある。宇宙空間で遂に再会を果たすデイモンとチャステインによるアクションには手に汗握らずにいられない。ハリウッド映画はこうでなくては。愉快で痛快な嘘と抱き締めたくなる人間の真実に包まれて、『オデッセイ』は堂々たる風格を具えたSFになった。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト

テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

blogram投票ボタン
blogram投票ボタン
人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ