ブラック・スキャンダル

ブラック・スキャンダル “Black Mass”

監督:スコット・クーパー

出演:ジョニー・デップ、ジョエル・エドガートン、
   ベネディクト・カンバーバッチ、ロリー・コクレイン、
   ジェシー・プレモンス、ケヴィン・ベーコン、ピーター・サースガード、
   ダコタ・ジョンソン、コリー・ストール、デヴィッド・ハーバー、
   ジュリアン・ニコルソン、アダム・スコット、ジュノー・テンプル

評価:★★




 出落ちじゃなかろうかと心配せずにはいられないジョニー・デップの役作り。1970年代から90年代にかけて、ボストンの裏社会を牛耳った実在のギャング、ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーを演じるにあたり、デップはハゲウィッグとカラーコンタクトを装着、歯も健康的とは言い難い並びと色に変化させた。そう言えば、デップが仮装好きであったことを思い出す。

 …と言っても、近年の凡作で見せる気の抜けた演技はここにはない。全身から滲み出る冷気がただ事ではない。声を荒げたり派手な立ち回りを演じたりすることのないままに、デップは画面の温度を急低下させる。冷酷な行為に走る場面よりも、何気ない会話をするだけの静の場面で見せる佇まいが恐ろしい。例えば秘密のレシピについての会話が入る食卓場面。或いは体調不良の友人の妻を気遣う場面。

 『ブラック・スキャンダル』の問題は、デップの恐怖演技からしかサスペンスを生み出せないことだ。物語を貫く緊張感の源は全てデップから放たれる。自分の得にならない、もしくは邪魔になると判断できる者を容赦なく排除するバルジャー、その非人間的な要素に頼り過ぎだ。

 バルジャーはFBI捜査官となった友人ジョン・コノリーと組み、ライヴァルのマフィアを没落させることで、地盤を強固なものにする。情報を引き渡すことと引き換えに自分の思い通りの世界を築くのだ。コノリーは言う。バルジャーとの自分の間には絆があると。バルジャーの弟で政治家でもあるビリーも加えて、この三人の関係が物語からコクを引き出すものになるはずだった。

 ところが、何ともまあ、その関係が淡白なこと。ボストンの掟…なんて仰々しいものは感じられず、己が生きる世界でのし上がる、そのためだけに動く単細胞な三人にしか見えない。バルジャーはコノリーに密約を「ビジネス」だと言い放つけれど、本当にそうとしか見えず、これでは利己的な男たちの栄光と没落が薄っぺらに描かれるだけではないか。ジョエル・エドガートン演じるコノリーはまだ良い。ベネディクト・カンバーバッチ演じるビリーは出てきた意味さえ分からない。

 バランスが悪いのだ。バルジャーとコノリーの関係は、バルジャーが完全にコノリーを支配する、その形が一向に崩れない。パワーバランスがまるで揺さぶられないのでは、バルジャーの冷酷非道な所業が並べられる以上の意味が浮上しない。FBIとの駆け引き、或いは政界を交えた攻防、また或いはライヴァルの逆襲。面白くなりそうな要素はデップの怪演に全て呑み込まれる。実話ゆえの遠慮があったのだろうか。つまらない事態だ。





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