人生はローリングストーン

人生はローリングストーン “The End of the Tour”

監督:ジェームズ・ポンソルト

出演:ジェシー・アイゼンバーグ、ジェイソン・シーゲル、メイミー・ガマー、
   アンナ・クラムスキー、ミッキー・サムナー、ジョーン・キューザック、
   ロン・リヴィングストン、ベッキー・アン・ベイカー

評価:★★★★




 ここに描き出される人気作家デヴィッド・フォスター・ウォレスを形容するのは難しい。有名人特有の気難しさや破天荒さがあるわけではなく、硝子のハートや繊細な佇まいなんて陳腐な箱に閉じ込められる窮屈さもない。けれど彼の口から出てくる言葉の大半は感じ入るところがあるし、でも自分が彼のような人間かというとそれも違う。

 『人生はローリングストーン』はRolling Stone誌の記者であるデヴィッド・リプスキーがウォレスの新刊ツアーに同行取材する様を切り取る。ふたりの男が四六時中一緒に過ごす一種のロードムービー。平凡な映画ならここで常識人の一方が気難しいもう一方に振り回されるところに重点を置いて語るだろうに、ここではもっと難しい技が繰り出される。奇抜なところのない人物同士を衝突させ、そこに奇妙な緊張感を創り出す。

 それは互いの中に似たようなものを感じ取ることから来るものなのかもしれない。置かれている立場も境遇も異なる人間が、その違いを確認した上で、共鳴や反発を細胞に沁み込ませていく。互いをジャッジしないふたりが、取材する側と取材される側という決定的な溝を知りながら、何か響き合うものを感じる。僅かなことで崩れてしまいそうな緊張の正体はそれだ。

 ウォレスの語る言葉は不思議だ。別に特別なことは語っていない。娯楽への向き合い方。恋人や子どもに対する思い。アラニス・モリセットを絡めた女性論。バンダナの意味。生い立ち。自己分析。とりわけ作家という職業に対する姿勢。まるで自分自身を売り物にしているような感覚が非現実的な思いに繋がり、それがまた虚無感を生み出していく現状。

 ウォレスは順風満帆のキャリアとは裏腹に、生きることに対して畏れを抱いている。演じるジェイソン・シーゲルがそれを念入りに演じる。高くも低くもない声。丸メガネ。清潔そうには見えない長髪。頭の中を隠すかのようなバンダナ。シーゲルはウォレスの危うさを体現しながら、その先に人間という生き物の身体の中に広がる宇宙を体現している。誰しもが持つその宇宙は、他人が決して侵すことのできない空間だ。

 ジェシー・アイゼンバーグ演じるリプスキーが取材の中で見つけ出すものは、その宇宙の色なのかもしれない。気さくな人柄でリプスキーを魅了する最初の数日とその仄暗い闇が見え隠れする最後の数日では宇宙の色がまるで違う。大抵の場合、人は自分の宇宙の支配者であり続ける。ウォレスはしかし、それを見誤りそうになる瞬間をちらつかせる。困ったことにそれが魅力的にも映る。ウォレスのラストカットとして紹介されるある場面など、それを象徴しているではないか。





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