白鯨との闘い

白鯨との闘い “In the Heart of the Sea”

監督:ロン・ハワード

出演:クリス・ヘムズワース、ベンジャミン・ウォーカー、キリアン・マーフィ、
   トム・ホランド、ベン・ウィショー、ブレンダン・グリーソン

評価:★★




 1819年、マサチューセッツ州ナンタケット島では捕鯨ビジネスが盛んだったらしい。『白鯨との闘い』は中でも捕鯨船エセックス号に目をつける。乗組員たちはいよいよクジラを大量に捕獲しようというとき、一頭のあまりにも巨大なマッコウクジラに出合う。凄惨なる死闘。余儀なくされる漂流生活。相次ぐ厳しい決断。何度も映像化されているハーマン・メルヴィルの「白鯨」は、このエセックス号の実話を基にしている。

 ロン・ハワード監督だから、クジラとの闘いをサスペンスたっぷりに描くことなんてお手の物だ。クジラの全体像をなかなか見せないままに、エセックス号が瞬く間に壊滅的ダメージを受けていく過程を手際良く見せる。乗組員たちを守るはずの号が、危険な乗り物と化していく。クジラが海の神として尊大な人間たちに襲い掛かる感じが良く出ている。

 けれど、ハワードは映画をクジラとの闘いに重きを置いたポップコーン・ムービーにする気はなかったようだ。白鯨とのバトルは物語の中盤に位置するエピソードのひとつに過ぎず(もちろんその後の展開に大きな影響は与える)、それよりも鯨油の入手のため、本来生きる領域ではない大海に乗り込んできた人間たちの傲慢さとそれゆえの代償を詩的に紡ぎ出す。

 狙いは分かるものの、登場人物まで背景の一部でしかなく、クジラや海以上にはっきりした輪郭を与えられないのは拙いのではないか。経験豊かな一等航海士(相変わらず凛々しいクリス・ヘムズワース)と未熟な船長(相変わらずぼやけた印象のベンジャミン・ウォーカー)の対立軸は甘ったるいし、新人(トム・ホランドが奮闘)の一等航海士に対する畏怖と憧憬が入り混じった感情も中途半端だ。

 人間関係が曖昧だと、バックにある海の表情まで単調に見えてくるから不思議だ。地平線と波以外何もないだだっ広い風景、単純に船の生活を辿るだけでは紙芝居的空気が立ち込めてくる。ブルースクリーン上での撮影であることを悟らせてしまうような違和感にも襲われる。人間の感情がドラマティックに動き、かつ互いに衝突し合うのであれば、自然と背景も活気づくものなのだけど…。

 回想形式になっている意味も分からない。わざわざ名優を担ぎ出し、エセックス号の記憶を辿らせる。告白する老人は最初語ることを躊躇う。そのいちばんの理由に拍子抜けする。生き延びるために乗組員たちが決断することは、映画では案外よく聞く話だ。当事者にとってみれば大事件であることは理解できるものの、それにポイントを置くのは今更ではないか。それに詩情を意識した画面の中、それは破廉恥にもバランスを崩す結果を招いている。これは脚本の問題かもしれない。





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